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在る偏屈者による半年遅れのMBA留学日記、そして帰国後に思うこと
先週の木曜日から、Moving Saleを行っている。
日本への引越しに向けて徐々に準備を進めているが、大物の家具や家電などは安物の割りにその大きさから送料が高くつくため、ほとんど現地で処分して、日本には送らないつもりでいる。こういう際、米国ではMoving Saleといって、不要になる家具などを格安で売りに出す。我々も周囲の例に倣ってやってみたのだが、想像以上に反応があって、驚いている。
インターネットを使って一般に広告することもできるのだが、得体の知れない人々が家に家具を見に来るのもあまり気持ちの良いことではないので、まずはMITコミュニティー内での広告に限っている。具体的には、スローンの現1年生および新1年生の多くが加入している非公式メーリングリストにメール広告を流し、MITの代表的な寮5箇所にビラを貼った。
それから5日が経ったが、毎日のように問い合わせがあり、テレビ、勉強机、本棚、ソファ、電子レンジなど、売りに出した家財道具の半分くらいが売れてしまった。価格を安めに設定したので、売りに出したものがすべて言い値で売れたとしても12万円ほどにしかならないのだが、それでも我々にとって不要なものが他の学生の生活に役立ち、かつリサイクルショップに持ち込むよりは良い値段で現金として我々の懐に入ってくるのだから、素晴らしい。
我々が使っていた家財道具の半分以上も、同様の方法で卒業したスローンの学生から購入したものであり、それがまた新たな持ち主の下へと旅立っていく。一般に米国の学生の方が日本の学生よりも経済的に豊かではないという事情もあるが(実際、買い手に日本人はいない)、パーティーなどで紙皿や紙コップを大量に消費し大量に捨てる米国人が、こういうところではモノを大切にする仕組みを持っていることは、多少意外でもある。
ただ、MITコミュニティー内では流石に少ないかもしれないが、小切手社会の米国では、こうしたセールの支払いにおいても買い手が小切手を希望することがあり、うっかりそれを受けてしまった売り手が騙されることもあるという。そういう話もあるので、「支払いは小切手でいい?」と聞かれても、”I would appreciate the cash payment”と答えている。Noの二文字で答えるよりは多少婉曲的だが、それでも「オマエは信用できない」と言っているようなもので、ちょっと気が引けないでもない。ただ、こういう場合、母国語でない英語のやり取りの方が、かえって気が楽であったりする。
そんなわけで、ポケットの中は、普段ほとんど持ち歩かないキャッシュでいっぱい。留学生活最後のゴルフ代やお土産代などを賄ってくれている。感謝感謝。


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ホスト・ファミリーのHLさんご夫婦を、手巻き寿司ランチにご招待した。
HLさんご夫妻については、このブログでも2度ほど書いたが、米国の良き中流階級と表現すべきか、ボストン圏の都心から少し離れた歴史ある住宅地に居を構え、知的・経済的水準の高いゆったりとした生活を送られている、素敵なご夫婦である。MITの紹介で知り合うことができたこのご夫婦とは半年に1回ほどお会いして、そのたびにご主人の日本に対する深い造詣と、米国の生活の物質的・精神的・文化的豊かさに感銘を受けてきた。いよいよ我々がボストンを離れる日が近くなったため、最後くらい狭い我が家にご招待しようということで、この日のランチになった。

幸い天候にも恵まれ、良い魚(特にこの日はサーモンが最高!)も手に入り、決して豊かではない学生用アパートではあるが、食卓の上だけはそれなりに豪華だったように思う。いつもHLさん宅にお伺いした際に遇されるように、我々も最初は「レセプション」としてソファーに腰を下ろし、お茶か食前酒とともに互いの近況を話し合い、頃合を見計らって食卓へ…、という流れでご接待したかったのだが、やはりどうも慣れないもので、動きや会話がぎこちない。HLさん宅に招かれると、「レセプション」で30分程度は過ごすのだが、この日は10分か15分でガマンできなくなり、食卓へどうぞ、となってしまったような気がする。
会話の中心は、ご夫婦の近況、特にご主人が先月仕事で日本にいらっしゃっていたときの話と、小学校教師をされている奥さんが教育視察団のメンバーに選ばれて来月中国に行く話。医療機関が導入するITシステムについてコンサルティングを行っているご主人は、東京と前橋を中心に数週間日本に滞在されたらしいが、東京では時間があれば博物館や美術館を回っていたという。それも、新宿?にある日本刀専門の博物館だとか、東京に住んでいた我々でも知らないようなところにまで足を伸ばされていて、彼の日本への興味にまた驚かされる。博物館といえば、というところから、話は米国内の日本美術展示に移り、ボストン北郊のセーラムにある美術館が話題に上った。明治時代に大森貝塚の発見などで活躍したモース博士が同地の出身で、日本滞在時に収集した美術品などを持ち帰ったのが同美術館の展示の始まりなのだそうだが、かつては浮世絵や陶器、甲冑などの「よくある」日本美術だけでなく、明治期の庶民の様々な生活道具が展示されていたそうで、ご夫婦はそれに大変興味をひかれていた。ところが、現在の館長になって展示方針が変わり、もっと「芸術品らしい」ものを展示しなければならない、ということで、それらの生活道具はすべて倉庫に仕舞われてしまったのだとか。残念に思ったHLさんご夫婦は、その旨を知人である同館の保管係員に伝えると、その係員は大いに同感であるとして、ご夫婦を特別に倉庫の中に招き入れてくれた。そこには、展示されていた以上の種類の生活道具が所狭しと保管されていたが、HLさんが最も驚いたのは、ペリー提督が浦賀に来航した際に将軍から贈られたという螺鈿の箪笥であった。HLさんは必ずしも日本美術に詳しいわけではないものの、歴史をご存知であるが故に、その箪笥の文化的・歴史的重要性はすぐに理解された。そしてその箪笥が人々に展示されることなく倉庫に眠っていることを非常に遺憾に思われたそうだが、現在ですら必ずしも注目されていないその箪笥、ペリーはどうやらそれ以上に無頓着であったらしく、引出しが開けられた形跡がないのだという。それは残念だ、という話が盛り上がり、勢い「開けてみよう」ということになって、係員が開けてみた。すると中からは、いかにも日本人ウケしそうな、こまごまとした無数の装飾品が現れたのだという。お話を聞きながら、自分もその「忘れられた」箪笥を開けてみたような気になり、またそれが今自らが暮らす場所のすぐ近くにあるという事実も重なって、非常な興を感じざるを得なかった。歴史や人の出会いというのは、実に面白いものである。

2時間ほどの滞在で、HLさんご夫婦は拙宅を辞された。短い付き合いではあったが、友人付き合いとは明らかに違う、何か特別な時間を過ごさせていただいたように思う。別れ際は、また一つ留学生活の終わりに近づいたという思いもあり、ちょっと感傷的になった。

お世話になりました。きっと、再会の日が来ることを。




先週から、セーリングを習い始めた。

ボストン市とケンブリッジ市を隔てるチャールズ川の沿岸には、多くのマリーナ、ボートハウスが設けられている。MIT、ハーバード大、ボストン大(BU)といった大学の施設のほかに、市営のマリーナもある。そうした中でも、MITのセーリング基地は、最も古い施設のひとつであり、また最もビジターに開放された施設でもある。ハーバード大やBUのセーリング基地では、大学のセーリングチームに所属している人でないとヨットに触ることができないのに対して、1930年代に設けられたMITのセーリング基地では、MIT関係者であれば誰でもヨットを借りてセーリングを楽しむことが出来る。また初心者向けには、毎週水曜日の夕方に無料の講習があり、3回コースで、ヨットの仕組みから用語、用意の仕方、操縦の仕方、片付け方など、一通りのことを教えてくれる。私は限りなくカナヅチに近いので、この手のスポーツは敬遠していたが、友人の後押しもあり、折角なので卒業までにやっておこう、と先週から講習会に参加している。

そんなわけで、今日は友人のAR君とセーリングの練習。デッキにあげられたヨットに帆を張り、チャールズ川に押し出し、舵を取り付けて、川に滑り出してゆく。今日はそれほど風が強くなかったので、恐らく比較的初心者向けの環境だったのだろうと思うが、それでもなかなかに難しい。風を読み、その力を受けられるように帆の向きと強さをコントロールして、かつ行きたいところを目指さなければならないので、大忙しである。二人で乗り込んだ場合、一人が帆を、もう一人が舵を操るのだが、二人の呼吸が合わないと、ヨットが推進力を失って止まってしまったり、右往左往したり、果ては転覆しそうになったりする。そもそも動力源を自然に頼っていて、その自然は目まぐるしく変化するので、なかなか人間の思い通りにはなってくれない。河岸から見ていると穏やかそのもののチャールズ川だが、ボストンのビル街や橋の橋梁を吹き抜けて変化した風は、川の場所場所によって全く違う角度と強さで吹いている。そのため、旋回する場所を間違えると、思いがけない横風を喰らって倒れそうになったり、逆に風が凪いで身動きできなくなったりしてしまう。私は人よりそういう傾向が多少強いかもしれないが、とかく人間は、過去の出来事から未来の出来事を予測しようとする。それがセーリングでは、上手く機能しない。過去ではなく、これから進もうとする水域の波の動きや、その近辺のヨットの動きを見なければならないのだが、なかなか頭がそういう風に働かないのと、技術的未熟さから、要するに余裕がない。特に、泳ぎに自信がないため、転覆に対する恐怖が人一倍強く、要するにビビっているので、余裕なんかないのである。

ただ、上級者が滑るようにヨットを操縦している姿は、本当に美しい。自然を味方につけているようで、他の乗り物にはない美しさがある。あれは是非、一瞬でも良いので、体験してみたいと思う。
そんなわけで、毎週やってみようと思う。
卒業までに、多少モノになるかどうか・・・。




先ほどの記事に補足するが、会社を大きくするためには、大きく分けて3つの方法があると思う。
①もっとやる
②より上手くやる
③やることそのものを変える

①は、文字通り、もっと一生懸命働く、ということである。
1日4時間しか働いていなかったなら、8時間働けば、売上は倍になるかもしれない。
一日5分考えるのよりは、一日50分考えた方が、良い結果が出るかもしれない。

②は、効率の問題である。
1日8時間働いていても、その中で8個しか製品を作れなかった人を、16個作れるようにする。
1日8時間で2回しか顧客を訪問していなかった営業マンを、4回訪問できるようにする。
そういった類の打ち手である。

そして③は、所謂イノベーション、あるいは事業変革である。
今まで中古車専門でやっていた店で新車も扱うようにするとか、
それまで自社でやっていた生産を海外のベンダーに外注するとか、そういうやつである。

当然、①の方がやさしく、③の方が難しい。
また効果が出るのも、①は比較的早く、③は時間を要する
コンサルタントとして顧客の会社に入ってゆくと、多くの場合、①で結構良いところまで改善することに気づかされる。ただ逆に、じっくりと③に取り掛かれる機会というのもあまりない。
そして、今回のSloanGearの売上拡大が何によって成し遂げられたかというと、やはり①が大きかったように思う。もちろん、色々な業務を見直したり、コミュニケーションを改善したり、②っぽいことも少なからずやったが、それでも増収の多くは、平たく言えば前年度よりマジメにやったことの成果だと思う。

そういう意味でも、私は何も難しいことをしていないと、改めて思う。
そしていつの日にか、②や③が求められる状況に来たときに、どれだけ対応できるかが、次のチャレンジになるだろう。



いよいよ、名実ともにSloanGear CEOとしての最終日を迎えた。
本日をもって、新チームから買収金額の払い込みを終え、会社譲渡の合意文書にサインをした。
以前にも書いたように、ちょっと寂しいような気もしたが、チームメンバーをみると清々した顔つきのようにも見え、まあ一件落着かな、と思う。
結局利益では昨年度に1%程度及ばなかったが、売上では昨年度を12%ほど上回った。利益を損ねては意味がないのだが、売上だけでいうと、去年の4月に(テキトーに)作った事業計画の目標値を僅かながら上回ったことになる。会社を引き継いだ段階では予想もしていなかったような未曾有の不況の中では、まあ良くやった方ではないか、と自画自賛してみる。

振り返ってみると、やっておいて良かったと思うこと、これをやっておけば良かったと思うこと、いろいろな反省がある。

やっておいて良かったこととしては、例えば
  • 常に1-2ヶ月先を考えること。少なくともチームの誰よりも先を考えていること
  • 毎週全員参加のミーティングをやること
  • 数字(売上、在庫、利益率など)は自分でみること
  • 基本的には細かい管理をせず、任せること。但し問題が発生した場合は、自分で手を動かして処理できるレベルまで掘り下げること
  • 常に悲観的に考え、「プランB」を用意すること。但しそれは必ずしも皆に見せないこと

逆に、やっておけば良かったと思うことは、多々あるのだが、例えば
  • もっと一人ひとりのメンバーと話す機会を設ける
  • モノの流れと同じかそれ以上に、カネの流れを考え、管理する
  • 他人に売る商品は、注文する前にまず自分が目で見て、手で触ってみること
  • 人に頼りすぎない・期待しすぎないこと
といったところか(何か書いてみると至極当たり前にみえるが、そんなものなのかもしれない)。

ともあれ、Class of 2009マネジメントチームの皆さん、これまでありがとう。お疲れ様でした。
そしてClass of 2010マネジメントチームの皆さん、頑張って!!

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PROFILE
HN:
Shintaro
性別:
男性
職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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