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在る偏屈者による半年遅れのMBA留学日記、そして帰国後に思うこと
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 2年生最終学期も前半が修了(終了?)した。
これで2年間のMBA課程も、7/8が終わったことになる。
米国での生活があと数ヶ月で終わるのだと思うと、非常に惜しいというか寂しい気持ちになるが、学生生活自体は、2年でちょうどよかったかな、と思う。今はどちらかというと、ここで学んだこと(授業で学んだ考え方や視点、テクニックだけでなく、人との接し方、コミュニケーションの仕方、価値観など)が社会でどれだけ通用するか、自分の社会との関わり方を変えるかを、みてみたいという気持ちが強い。そのステージとして、米国でやってみたい気持ちは強いのだが、未曾有の不況下にある日本で私の復帰に期待してくれている方々がいる以上、戻らざるを得まい。

というわけで、恒例であるが、この春学期前半に履修した授業の総括をしておきたい。

Global Economic Challenges
担当教官:Kristin Forbes
この期間中最も面白かった授業。
教えるForbes教授は、1998年にMITで経済学博士号を取得した後、世界銀行、米国財務省などを経て、2003年に当時のブッシュ政権下でホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)メンバーに史上最年少で抜擢された人物。年齢的には39-40歳くらいか。気取ったところがなく、女子学生のように笑いながら延々と話し続けるのだが、数字にはめっぽう強く、話も(よくしゃべるとはいえ)決して冗長ではなく、論旨が明快でそれを支える論理もしっかりしている。また学生の質問に対して、多くは的確な実例を引用しつつ明快に答えるのだが、わからないことははっきりとわからないという点にも好感をもった。よほど健全な自信がないと、ああいう態度は取れない。
授業の内容は、メキシコやアジアなどの経済危機の歴史とその構造分析、それを踏まえた現在の米国の金融危機の分析、新興工業国の分析、世界の所得格差についての考察など、マクロ経済的視点から世界の大きな時事問題について一話簡潔的に論じていくというもの。マクロ経済学の分析モデルを用いつつ、経常収支、失業率、インフレ率、為替などのマクロ経済指標からその国の経済の健全度・脆弱度や必要な経済政策を分析する力を養う。普段なかなか一国の経済指標をじっくりと分析・比較することがないので、改めてやってみると非常に興味深い。また教授自身の自論を示しつつも、学界や政界の異なる見方も紹介してくれるので、バランスが良い。
現在妊娠中であり、夏ごろに出産予定ということで、そのためもあって今年は半期の講座になったそうだが、是非通期で学んでみたい講座である。

Intro to System Dynamics
担当教官:Damon Centola
System Dynamics とは、1950年代にMITで考え出された理論・分析アプローチである。社会現象の作用・反作用を複合的に捉えることで、中長期的な経済現象・社会現象の変化をシミュレーションし、問題解決に結びつけようとするもので、なかなかやってみないと上手くは説明できないのだが、非常に新しい物事の見方を教えてくれる。多くの同級生が既に履修していて、皆大変だが面白いと異口同音に言うので、私も今回チャレンジしてみた。
やってみると、確かにまったく新しいものの考え方を求められ、かつ世の中の変化について非常に論理的・構造的かつ多角的な理解を与えることができる。イースター島の人口があるとき急増して一気に激減したのはなぜか、猛威を振るった台湾のSARSの感染がある時点から広がらなくなりやがて減退したのはなぜか、カリフォルニアの山火事が当局の必死の消化・防止活動にも関わらず巨大化しつづけるのはなぜか、などの問題を、講座の名前の通り、社会・経済システムのダイナミズムとして、糸を解きほぐすように分析してゆく。非常に知的で面白い作業である。宿題が大変なのだが、勉強したという気になってよい。
唯一残念だったのは担当教官。いかなる講義を含めて教室でモノを教えるのはこれが初めてなのだそうで、はっきり言ってぎこちない。教える情熱もあまり伝わってこない。まあ仕方ないが…。

Supply Chain Planning
担当教官:D.Simchi-Levi/ S.Graves
先学期に四苦八苦したLogistics Systemという講座の応用版という位置づけで履修した授業。MITのDepartment of Civil and Environmental Engineeringの教授であるSimchi-Leviが教え、授業も有名なドームのあるメインキャンパスで行われるというので、また新しい発見がいろいろとありそうだと期待して履修したが、Logistics Systemで得たものに比べると、新しい知識の獲得度合いは低かったように思う。いくつかの応用理論の講義と、ケーススタディを通じた実践の組み合わせであり、ひたすら講義が行われたLogistics Systemに比べると、新しいテクニックに出会うことが少ないのは構造的に仕方ないような気もするが、それを差し引いても少し手ごたえが足りなかったかもしれない。もっとも、ケースで扱った問題は比較的面白いものが多く、先学期の復習的な意味も含めて、それなりに勉強にはなった。シンガポールにある提携大学と通信回線で繋いで授業を行う関係上、開始が朝8時と早く、その「コスト」を払って参加しているために、どうしても授業に対する要求レベルが高くなってしまったのかもしれない。
教授はというと、Simchi-Levi教授はまだ良いのだが、大半を教えるStephen Graves教授があまり講義上手ではなく、授業が盛り上がらず、というかむしろ混乱したりすることもあった。何せ彼が発する学生への問いかけに対して、誰も何を問うているのかわからなかったりするのだから、辛い。内容は良いのだが教えるのが下手、というのは、MITのOperation系の授業に共通した課題のように思われる。


International Supply Chain Management
担当教官:A.Weiss/ H.Marcus
この期間中、最も期待ハズレだった授業。
はっきり言って、オススメしない。
担当のMarcus教授自身が最初の授業で語っていたように、Operation系の授業ではInternationalというキーワードを冠する唯一の授業であり、先学期に履修したLogistics Systemでは逆に「ここでは米国内のロジスティクスをベースに議論を進める」と説明されていたので、これまで十分私がカバーできていなかった分析の視点やテクニックが得られるものと期待していたが、何のことはない。分析といえば、要するに、国内で完結するサプライチェーンに比べて、国際的なサプライチェーンの場合は、生産コストが安い一方で回転期間が長くなって在庫コストが高くなるので、そのバランスを最適化しなければならない、というだけの話で、極めて当たり前。それ以外の定性的な要検討ポイントも、ポイントとしては面白いものもあるのだが、何を重視してどの程度定量分析の答えに修正を加えるべきかについて、答えを出すための具体的な考え方や、有益な示唆を得ることができなかった。

Power & Negotiation
担当教官:Jared Curhan
この春学期に履修している、唯一の通期授業(つまり他の授業は春学期の前半だけで修了する)。
担当のCurhan教授が上手いこともあり、非常に面白く、学びも多い。
毎週、新しく学んだ交渉(Negotiation)のテクニックや視点を活かして、実際に与えられた課題について決められた相手と交渉を行い、それを授業で振り返って、更に交渉術を深めていく、というようなかたちで進められる。
教授は、交渉術はかなりの部分において後天的に獲得可能であるという大前提のもと、心理学の専門家らしく交渉術を要素分解して論理的に解説してくれる。一回3時間の講義なのだが、まったく長いと感じさせられないほど、名調子で授業が進んでいく。
後半が楽しみである。

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このブログでも何度か触れている学生企業SloanGearも、昨年5月1日に営業を開始してから10ヶ月余りが経過した。あと1ヶ月ほどで次の代のオーナーをみつけて会社を売却し、引き継がねばならない。昨年、仲間10人で総額35,000ドルほどを投資して買ったこの会社、その後の営業利益(期末に配当として10人で山分けする)でほぼ投資元本回収の目処はついたが、会社が売れなければその投資元本回収だけで終わってしまう上、10年以上続いてきたこのユニークな経営実践訓練の場が失われてしまうので、次のオーナーチームを発掘・育成することは現在最も重要な課題である。具体的には、この会社に興味をもつ1年生をできるだけ多く見つけ、チームを作ってもらって、翌月初旬までに買収提案をまとめて提出してくれるように誘導しなければならない。そこでこの3月に2回に分けて、会社の内容や投資・引継ぎの手順を現一年生に説明する説明会を開催した。去る5日に一回目を開催し、今日はその二回目。

説明会では、会社の概要や、投資の手順に加えて、新チームの事業機会や、今年1年の業況を紹介した。特に今年1年の業況を振り返ることは、自分たち自身の振り返りという意味でも、良い総括の機会となったと思う。
次の代に誇れる(というほど大げさなものでもないが、一応)成果としてアピールしたのは、次の5点。

①不況下でのバランスの取れた高成長
特に昨年後半から悪化した経済情勢と、それに伴うMBA学生の予算緊縮化にも関わらず、2月末時点で対前年同時期比売上22%増を達成。利益率は多少悪化したが、それでも利益額では昨年を十分に上回っている。また特定の部門に依存した成長ではなく、企画生産、受注生産など、全ての部門で昨年を上回った。

②事業インフラの強化
我々が事業継承した段階で既にパートナーシップが確立されていたTumiに加えて、Tiffanyともギフト商品の販売代理店契約を締結。
また遠隔地(といっても米国内だが)に住む卒業生向けに、製造・物流を委託化したオンラインショップを開設。
徐々にではあるが、収益に貢献している。

③製品ラインナップの改善
先代まではアパレル製品、とりわけ一部のジャケットに売上が極端に集中していた事実を踏まえ、パンツや子供用品、非アパレル製品などに商品を展開、より網羅的な商品群に育て上げるとともにバランスのとれた収益構造も実現。

④運営ノウハウの強化・確立
ミーティングやセールスを定例化し、サプライヤーとの交渉などのプロセスを標準化。
チームの組織上の役割・権限区分も明確化。

⑤ブランド認知度向上
スローンやMITの校内新聞、卒業生向けのニュースレターなどに記事をよせて、認知度を向上


こうしてみてくると、我ながら悪くない成果をあげてきたように思える(まあ良い点ばかり挙げているからだが)。チームの皆の努力の賜物である。
が、一方で、こうして総括していると、もう少し上手くできたのではないか、という点も、ハード面、ソフト面ともに思い出されてくる。特に最後まで(まだ最後ではないが)答えが見つかっていないのが、当初からあったチームメンバー内のコミットメント度合いのバラつきをどう底上げし、全体としてモチベーションの高いチームにしていくか、という点。そしてこれを達成するために、どう自分がチームを盛り上げていくか、という点については、いろいろ考え、試してみても、上手く行かなかった気がする。チームへの期待値が高すぎるのかもしれないが、できていないことばかりが目に付いて、できたことを讃えて力にしていく努力と工夫が足りなかったように思う。この部分は2年間の留学期間中に鍛えたいと思っていたスキルの最重要項目の一つなのだが、やはり生来ヒトを褒めるのが下手なのが、なかなか改善されない。毎週のチームミーティングなどでも、雰囲気が悪いなあと思うことはあるのだが、手が打てない。そういう意味では、あまり学べていないなあ、と思ったりする。

ともかく、そんなSloanGearもあと1ヶ月あまり。何とか有終の美にもっていけるようにしたいものである。





大雪から始まった3月第一週だったが、週も後半にいくに従って、気温も上がり(といってもプラス一桁だが)、大分と過ごしやすくなってきた。時間帯も今日から夏時間(といっても気温一桁だが)に変わり、空は夕方6時頃まで明るい。寮の児童公園を永らく覆っていた雪もなくなり、やっと子供も外で遊べるようになった。真っ白な雪に覆われた公園も絵にはなるが、やはり子供の笑い声が響く公園の方が良い。
長女は三輪車がちょっとしたブームのようである。唯一彼女のサイズに合う赤い三輪車に乗って、一周100m弱の公園の周りをくるくると回っている。自転車で快走する年上の子供に英語で「どけ!」と言われたりすることもあるが、以前のようには怯まなくなった。
また先月の後半から急に歩けるようになった次女も、得意げに公園を歩いている。
何気ない家族の時間だが、かけがえのない大切な時間のようにも思えた。
後で写真を見ながら、あのときはこうだったねぇ、みたいな話をするんだろうなあ。
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昨日から3月。 先週の後半くらいから気温がぐんとあがり、自宅のまわりに万年雪のように堆積していた雪も一掃されて、ようやく春か・・・、と思っていたら、大雪が降った。 いやいやまだ冬はこれからですよ、といわんばかりに、氷点下の空気の中を雪が深々と降り続いている。自宅の勉強部屋から見える景色は、まったくもって冬である。除雪車の作業の音だけが聞こえてくる。車は早くもすっかり雪に覆われている。明日は早めに起きて雪かきをしなければならない。気象情報を確認すると、大雪警報さえ出ている。ボストンの主要公立学校は続々と休校になっている(MITはやるらしい)。雛祭りの明日に向けてリビングに飾ってあるささやかなお雛様の人形も、何事かとびっくりしているだろう。 

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かつて大学を卒業して最初に就職した鉄道会社の同期G君が、ボストンに訪ねてきてくれた。
新入社員研修で相部屋、1年半の現場経験を経て最初に配属された職場でも同じ課という、当時の人事当局の見識を疑いたくなるような、いわゆる「腐れ縁」の仲間である。お互い青臭かったのか、生意気だったのか、新入社員のときも、オフィスの同じシマで仕事をしていたときも、文句ばかり言って、ルール外のことばかりやっては、怒られていたような気がする。それが10年近く経った今、彼はニューヨーク州のコーネル大学に留学していて、車でボストンに住む私を訪ねて来てくれている。ここに来て、かつて思ってもみなかったような状況に遭遇することにはかなり慣れてきたつもりだが、それでもやはり、これはスゴいことではないかと思う。お互い成長したなあと思うし、運に恵まれたなあと思うし、よくタイミングが合ったなあとも思う。せっかくの機会なので一緒にNBAの試合を見に行ったが、試合を見ている間も、「俺、何でここにいて、何でこいつが横にいるんだっけ?」と実に妙な気持ちだった。もっとも、G君も多かれ少なかれそう思っていたのかもしれないが。

また同時に、この10年でのそれぞれの変わり様と、ボストンでの再会という予想外の展開があり得たのなら、今スローンで机を並べて勉強したり、馬鹿なことを言って笑ったりしている連中と、また10年後にどんなところでどんな風に出会うのか、これも想像を遙かに超えた展開が待っているのではないか、と思う。世の中、そして人の縁というのは、面白いものである。



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PROFILE
HN:
Shintaro
性別:
男性
職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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