「 Niagara falls trip ...自然を破壊しつつ、自然を楽しむ 」
「試験後の一段落」はまだ続く。
週明けの月曜日に授業がないことを利用して、二泊三日でナイアガラの滝まで家族旅行に出かける。
妻の出産が近く、飛行機はもう乗れないということもあり、ドライブ旅行である。片道470マイル、約750km、日本でいえば東京から広島県の尾道くらいの距離にあたる。自然と、一日目と三日目はまるまるドライブに費やすことになる。
臨月に近い妻を連れてそこまでやるか、という批判は耳に痛いが、夫婦と長女という三人家族での旅行も恐らく今後10年以上はできないだろうと思い、腰をあげた。
というわけで、初日となる昨日は、ボストンからナイアガラ(カナダ側)までを車で走った。
もっとも単純に行こうと思えば、自宅から5分とかからないところにあるインターから高速道路I90に入り、それをひたすら西進すれば良い。ただ、それではほぼ全行程内陸を走ることになり、あまり変化がないため、途中で北にそれて、オンタリオ湖沿いを走ることにした。
まずはMassachusetts Turnpikeと呼ばれるI90を使って、マサチューセッツ州を東西に横断する。これだけで130マイルあり、渋滞はないが、それでも2時間は十分かかる。このマサチューセッツ州横断は、丘の起伏をかわしながら森の間を抜けていくようなルートで、地形に道路形状が従属していて、日本の高速道路(もちろん郊外の)を走るのに近い情景である。
その後はニューヨーク州に入り、これをまたひたすら横断する。途中Syracuseの街までは、川沿いを走ることになるが、これを過ぎると酪農地帯をまっすぐに抜けていくような、広大な光景になる。日本の高速道路は、眠気防止のために平坦地でもわざと蛇行させて作ってあるが、米国の高速道路にそのような小細工はなく、まっすぐなところはまっすぐである。また意外に(?)皆の運転マナーも良く、無駄に先行車を煽ったり、法定速度を大幅に上回るスピードで爆走していったりする輩がいない。したがって、舗装状態さえよければ手放しででも運転できる(そんなことはしないが)。
2時間に一度程度休憩をしながら、西進する。
途中、Rochesterという街への分岐でI90を離れ、そのまま北進してLake Ontarioにあたり、湖岸の道を西に向かう。沿岸のほとんどは茂みで覆われており、湖水に張り付くような沿岸のドライブルートではなかったが、それでもときおり、湖面が視界に入って楽しい。人里離れた別荘のような邸宅や、ちょっとした漁港のようになった入り江もあり、それらは本当に映画のワンシーンのようで、絵になる。道は片側一車線の田舎道のようになったりもするが、とにかく交通量が少ないので、運転も楽である。
そのままオンタリオ湖沿いを西に進むと、ナイアガラの滝を経由してエリー湖からオンタリオ湖に注ぐナイアガラ川にあたる。全長60kmにも満たないこの川が、このあたりの米国とカナダの国境になっている。そしてこの川がオンタリオ湖に注ぐ「河口」に、かつて英国軍が国境防衛のために築いたナイアガラ砦が残されている。
米国の広大な自然の中に、英国のこじんまりした石造りの要塞が忽然と現れる。日本で買った旅行ガイドブックにはまったく触れられてもいないが、岸壁を背に三階建ての城館を設え、周囲を五稜郭風の堀と城壁をめぐらせたなかなか本格的な砦で、明治時代の日本海軍の某提督も視察に来ているような名跡である。大学時代に訪れた、スコットランドの砦を思い出す。もっとも、城館の窓からオンタリオ湖を望むと、向こう岸にはカナダ・トロントの近代的ビル群がシルエットをみせているあたり、やはり英国の郊外でみる城館とは異質である。
ちなみにこの砦を知ったのは、Google Earthのスポット写真で見たからだ。情報技術の力は凄い。
その後、ナイアガラ川沿いに南下し、国境の橋を超えてカナダに入る。
既に夕刻、陽が今にも落ちそうな時間帯で、国境は大混雑。全長500mほどの橋と、その両側にある両国のPassport Controlを通過するのに、1時間以上を要した。
その間、橋の向こうには、ナイアガラの滝が姿をみせている。車列と西日でよく見えないが、轟音と水しぶきからそれとわかる。
しかしそれよりも、あまりにも無計画、無秩序に乱開発された瀧周辺、特にカナダ側の景観の惨状が目についた。色とりどりの高層ホテルがネオンを競わせ、奇形のタワーが毒キノコのようだ。
さらに低層には吐き気がしそうに軽薄なアトラクションが、さらに強烈なネオンを並べている。
これらの景観阻害物体群がすべて存在せず、あえて建物を置くなら先ほどの砦を代わりすえれば、どんなに素敵だったかと嘆く。
やはり米国(まあこの場合はカナダだが)のエネルギーは、自然を放置しているうちは良いが、自然に経済活動の矛先を向けた瞬間に、暴走し、抑制が効かなくなるのかもしれない。
二日目。
朝から一日のんびりと、ナイアガラの滝周辺を観光する。
子連れであり、妊婦連れであるので、ゆっくりと滝の周囲を歩きながら、時折名所に立ち寄る。
以下、いくつかの写真で振り返る。
↓まずは全景。左から順に、American Falls(アメリカ滝)、Horseshoe Falls(カナダ滝)、カナダ側のホテル群。なお、前景に妻が写っているが、これは写真の主題ではない。
↓Horseshoe Fallsの全景。
↓絶壁を降りたところに作られた船着場から遊覧船に乗り、滝壺に限界まで近づくことができる。
↓そしてその遊覧船から見上げる滝は、まるで氷山か雪崩のよう。圧力が凄い。
↓そんなところを遊覧船で通りかかれば、当然、ずぶぬれになる。
↓国境を歩いて越え、米国側のGoat島(滝に落ちる前のナイアガラ川に取り残された島で、American FallsとHorseshoe Fallsを隔てる)からAmerican Fallsを望む。下をみると、吸い込まれそうになる。
↓そのGoat島からは、ツルハシで岩を打ち抜いて作ったと言われるエレベーターで滝の下におりて、徒歩でAmerican Fallsに近づくことが出来る。遊覧船から見るよりさらに近く、水しぶきの圧力から滝を直視できない。滝というより、水塊、とでもいう方が近い。どこにでも行きたがる人間の業を感じる。
↓絶え間なく湧き上がる水しぶきが虹を映し、心が洗われる。
滝とその周辺の自然の美しさは、語るまでもなかろう。
そしてその美しさが、ガソリン数十リットルを燃やし、前述した醜い高層ホテルの一室に宿泊し、ファーストフードを食い散らかして、これらの自然を楽しんだ自分の罪深さを、より際立たせる。
そして明日も、早朝からガソリンを燃やしてボストンに帰る。
途中のサービスエリアに、娘の紙オムツを捨てながら。
地球さん、すみません。
週明けの月曜日に授業がないことを利用して、二泊三日でナイアガラの滝まで家族旅行に出かける。
妻の出産が近く、飛行機はもう乗れないということもあり、ドライブ旅行である。片道470マイル、約750km、日本でいえば東京から広島県の尾道くらいの距離にあたる。自然と、一日目と三日目はまるまるドライブに費やすことになる。
臨月に近い妻を連れてそこまでやるか、という批判は耳に痛いが、夫婦と長女という三人家族での旅行も恐らく今後10年以上はできないだろうと思い、腰をあげた。
というわけで、初日となる昨日は、ボストンからナイアガラ(カナダ側)までを車で走った。
もっとも単純に行こうと思えば、自宅から5分とかからないところにあるインターから高速道路I90に入り、それをひたすら西進すれば良い。ただ、それではほぼ全行程内陸を走ることになり、あまり変化がないため、途中で北にそれて、オンタリオ湖沿いを走ることにした。
まずはMassachusetts Turnpikeと呼ばれるI90を使って、マサチューセッツ州を東西に横断する。これだけで130マイルあり、渋滞はないが、それでも2時間は十分かかる。このマサチューセッツ州横断は、丘の起伏をかわしながら森の間を抜けていくようなルートで、地形に道路形状が従属していて、日本の高速道路(もちろん郊外の)を走るのに近い情景である。
その後はニューヨーク州に入り、これをまたひたすら横断する。途中Syracuseの街までは、川沿いを走ることになるが、これを過ぎると酪農地帯をまっすぐに抜けていくような、広大な光景になる。日本の高速道路は、眠気防止のために平坦地でもわざと蛇行させて作ってあるが、米国の高速道路にそのような小細工はなく、まっすぐなところはまっすぐである。また意外に(?)皆の運転マナーも良く、無駄に先行車を煽ったり、法定速度を大幅に上回るスピードで爆走していったりする輩がいない。したがって、舗装状態さえよければ手放しででも運転できる(そんなことはしないが)。
2時間に一度程度休憩をしながら、西進する。
途中、Rochesterという街への分岐でI90を離れ、そのまま北進してLake Ontarioにあたり、湖岸の道を西に向かう。沿岸のほとんどは茂みで覆われており、湖水に張り付くような沿岸のドライブルートではなかったが、それでもときおり、湖面が視界に入って楽しい。人里離れた別荘のような邸宅や、ちょっとした漁港のようになった入り江もあり、それらは本当に映画のワンシーンのようで、絵になる。道は片側一車線の田舎道のようになったりもするが、とにかく交通量が少ないので、運転も楽である。
そのままオンタリオ湖沿いを西に進むと、ナイアガラの滝を経由してエリー湖からオンタリオ湖に注ぐナイアガラ川にあたる。全長60kmにも満たないこの川が、このあたりの米国とカナダの国境になっている。そしてこの川がオンタリオ湖に注ぐ「河口」に、かつて英国軍が国境防衛のために築いたナイアガラ砦が残されている。
米国の広大な自然の中に、英国のこじんまりした石造りの要塞が忽然と現れる。日本で買った旅行ガイドブックにはまったく触れられてもいないが、岸壁を背に三階建ての城館を設え、周囲を五稜郭風の堀と城壁をめぐらせたなかなか本格的な砦で、明治時代の日本海軍の某提督も視察に来ているような名跡である。大学時代に訪れた、スコットランドの砦を思い出す。もっとも、城館の窓からオンタリオ湖を望むと、向こう岸にはカナダ・トロントの近代的ビル群がシルエットをみせているあたり、やはり英国の郊外でみる城館とは異質である。
ちなみにこの砦を知ったのは、Google Earthのスポット写真で見たからだ。情報技術の力は凄い。
その後、ナイアガラ川沿いに南下し、国境の橋を超えてカナダに入る。
既に夕刻、陽が今にも落ちそうな時間帯で、国境は大混雑。全長500mほどの橋と、その両側にある両国のPassport Controlを通過するのに、1時間以上を要した。
その間、橋の向こうには、ナイアガラの滝が姿をみせている。車列と西日でよく見えないが、轟音と水しぶきからそれとわかる。
しかしそれよりも、あまりにも無計画、無秩序に乱開発された瀧周辺、特にカナダ側の景観の惨状が目についた。色とりどりの高層ホテルがネオンを競わせ、奇形のタワーが毒キノコのようだ。
さらに低層には吐き気がしそうに軽薄なアトラクションが、さらに強烈なネオンを並べている。
これらの景観阻害物体群がすべて存在せず、あえて建物を置くなら先ほどの砦を代わりすえれば、どんなに素敵だったかと嘆く。
やはり米国(まあこの場合はカナダだが)のエネルギーは、自然を放置しているうちは良いが、自然に経済活動の矛先を向けた瞬間に、暴走し、抑制が効かなくなるのかもしれない。
二日目。
朝から一日のんびりと、ナイアガラの滝周辺を観光する。
子連れであり、妊婦連れであるので、ゆっくりと滝の周囲を歩きながら、時折名所に立ち寄る。
以下、いくつかの写真で振り返る。
↓まずは全景。左から順に、American Falls(アメリカ滝)、Horseshoe Falls(カナダ滝)、カナダ側のホテル群。なお、前景に妻が写っているが、これは写真の主題ではない。
↓Horseshoe Fallsの全景。
↓絶壁を降りたところに作られた船着場から遊覧船に乗り、滝壺に限界まで近づくことができる。
↓そしてその遊覧船から見上げる滝は、まるで氷山か雪崩のよう。圧力が凄い。
↓そんなところを遊覧船で通りかかれば、当然、ずぶぬれになる。
↓国境を歩いて越え、米国側のGoat島(滝に落ちる前のナイアガラ川に取り残された島で、American FallsとHorseshoe Fallsを隔てる)からAmerican Fallsを望む。下をみると、吸い込まれそうになる。
↓そのGoat島からは、ツルハシで岩を打ち抜いて作ったと言われるエレベーターで滝の下におりて、徒歩でAmerican Fallsに近づくことが出来る。遊覧船から見るよりさらに近く、水しぶきの圧力から滝を直視できない。滝というより、水塊、とでもいう方が近い。どこにでも行きたがる人間の業を感じる。
↓絶え間なく湧き上がる水しぶきが虹を映し、心が洗われる。
滝とその周辺の自然の美しさは、語るまでもなかろう。
そしてその美しさが、ガソリン数十リットルを燃やし、前述した醜い高層ホテルの一室に宿泊し、ファーストフードを食い散らかして、これらの自然を楽しんだ自分の罪深さを、より際立たせる。
そして明日も、早朝からガソリンを燃やしてボストンに帰る。
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HN:
Shintaro
性別:
男性
職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
ご意見、ご感想は↓まで
sloangear★gmail.com
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