米国五大証券の一角に数えられるベア・スターンズ(The Bear Stearns Companies)がJRモルガンに買収されることになった。
14日のニューヨーク連銀による救済策発表に続き、16日に発表された。
衝撃的なのは、13日時点でおよそ一株60ドルだった株価が、NY連銀による救済策発表後33ドルまで下落、そしてJRモルガンによる買収は、一株2ドル(総額2億3600万ドル)で合意されたことである。たった3日で、歴史ある米国大手投資銀行の株価が30分の一になり、たった200億円ちょっとで買収されてしまったのだ。
ベア・スターンズの名前は、米国に来るまで(もっと言えば去年サブプライム問題が深刻化するまで)正直言って聞いたこともなかったが、1970年代に初めてMBO(LBO)を手がけた会社で、約1万4千人の社員を抱える、紛れもない大手投資銀行である。昨年6月に同社傘下のヘッジファンドHigh-Grade Structured Credit Strategies Enhanced Leverage Fundが破綻し、これに与信供与していたメリルリンチ、Bank of Americaなどの大手金融機関が軒並み損害を被ったことが、「サブプライム問題」の端緒であったが、当然ながらメリルリンチなどの貸し出し銀行以上に、これを直接管理していたベア・スターンズへのパンチは強烈で、昨年下期だけで損失は3000億円弱にのぼった。もともとセカンダリ市場を中心にした「得意分野」にしか基盤を持たない体制もあって、体力的に持ちこたえられなかったのだろう。
14日に発表されたNY連銀の救済策は、1998年のLTCM救済より一歩踏み込んで(当時は救済を仲介したのみ)、直接資金を貸し出すというもの。まさに、かつての山一證券への日銀特融と同じスキームである。そのことからして、いかに状況が深刻かを更に市場にアピールすることになってしまったのだが、それから中一日をおいての身売り発表、しかも市場価格からあまりにも乖離した金額でのディールに、先に開いたアジアの株式市場はパニック売りになっている。つまり、「あの銀行の正味価値ってそんなもの?ということは、あの銀行の負債(投資している企業にとっては資産)はほとんど価値がないということ?」という理解から、一気に売りが広がったのだ。
明日、米国の市場が開いたら、どうなることか・・・。
今夜一緒に飲んでいた、同じ寮に住むチリ人のAR君は、フランスの投資銀行カリヨン(Calyon)からサマーインターンの内定をもらって喜んでいたのだが、このニュースに接して、一転不安そうな様子であった。
そういえば、山一が破綻したときも、自分は学生だったなあ・・・。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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