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「 Why study/ work abroad? …海外に行きたがらない日本人 」
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最近、日本人の若者が海外に消極的だという報道や論評、経営者のお話を聞くことが極めて多くなった。もはやそれは、ニュースではなく、定説となっているような気さえする。
 

  • 新入社員が海外に行きながらない
  • 外務省のキャリア官僚が在外公館に赴任したがらない
  • 海外で学ぶ日本人留学生が世界全体で11万人から10万人に減少した
  • 米国で学ぶ日本人学生は2000年に比べ学部生で半分以上、大学院生でも1/4以上減少した。既に3万人を割り込む一方、人口で半分に満たない韓国は7万5,000人の学生を米国に送りこむ
  • 海外旅行をする20代の日本人の数は1996年の463万人をピークに減少を続け、10年後の2006年に300万人を下回って、その後も減少の一途…

どんな角度で見ても、若者の「内向き」傾向を否定する説はなかなか見つけられない。
この理由として、不況や就職難をあげる説は多いが、90年代初頭のバブル崩壊後も、海外志向はここまで低下しなかった。
また、大前研一氏(MIT卒)が「若者のハングリー精神不足」を指摘している。曰く、
「不況とかは関係ない。かつての貧しい時代でも米国で学ぶ日本人留学生は多かった。要は海外で勉強して、日本をこう変えたいというような志の高さやハングリー精神が失われたことによるものだ」
しかしこれも、どうもピンと来ない。

私が初めて一人で海外旅行をしたのは、まさに「20代の若者の海外旅行者数がピーク」に達した1996年であった。ちょっとしたアドベンチャー気分と好奇心が動機づけであったが、自分で言うのも恥ずかしながら、ハングリー精神は別になかったと思う。またその約10年後にMITに留学した際も、「日本をこう変えたいというような志の高さ」や「ハングリー精神」が漲っていたとは、とても言えない。

私は、こうした「内向き」への変化の理由は単に、海外へ行くことのリスク vs リターン、費用対効果の標準的なバランスが変わった(あるいは変わったと皆が思っている)ことによると思っている。

海外旅行に行かなくなったのは、他にもっと楽しいことが増えたからだろう。私も初めて海外に行ったときはそうだったが、初めて挑戦するいろいろな物事の中で、海外旅行というのは金銭的にも心理的にもバリアーが高いものである。それより身近でより費用対効果の高い遊びがあれば、そちらに向かっても不思議はない。
海外に留学したり、赴任したりしたがらなくなったのは、結局のところそうした経験をした人の多くが不遇をかこっている、あるいは少なくとも、純粋国産でキャリアを歩んだ人に比べて必ずしも高い評価を受けていない、という現実観があるからだろう。例えば私が学んだビジネススクールという教育機関のランキングの一つの基準は、日本のような「入学試験の難しさ(=偏差値)」ではなく、「修学前後の給与の増加率」である。いわゆるリーマンショックで方程式が崩れ去ってしまったが、私が留学したころには、有名ビジネススクールを卒業すると、給料が概ね1.5倍になるといわれていた。中国や韓国など、米国への留学生の数を伸ばしている国々では、この倍率はさらに高くなるだろう。これが現実としての留学の期待リターンであって、日本以外の国々の若者をひきつける要素である。中国や韓国の若者の多くが、母国を変えたいという志を第一理由としてどんどん海を渡っているわけではない。翻って日本では、恐らく留学生の平均をとったときに、上述したような留学による給与の上昇率が極めて低いように思われる。そもそもの給与が高い、という要因もあるだろうが、最大の理由は、留学や海外勤務を経験した人材が、その経歴を活かして転職を含む能動的なキャリアアップを図ろうとしないことにあるだろう。終身雇用が崩壊した、と言われるが、それとて雇用者側が解雇をしやすくなっただけで、労働者側が自らキャリアアップのために能動的に職を変えていく文化が定着したかというと、少なくとも最近10年間でそのような変化はあまり感じられない。私自身、いわゆる外資系の企業にいて、留学による実務上・キャリア上のプラスが現実的に感じられたこと、また終身雇用ではないので自らのキャリアを自ら形成していく必要性があることから、留学をしたいと思ったが、日本企業に10年もいた場合に同じ判断をしたかというと、必ずしも自信がない。

結局のところ、日本企業が、留学や海外勤務を経験した人材を、そういう経験をしていない人材に比べて横並びでない厚遇で迎え入れ、社内登用・中途採用を問わず積極的に活用しようとしない限り、海外に出ることは今の日本では「割に合わない」場合が多いのであろう。かつては、国際化という意味不明なスローガンのもとで、日本もそのうち海外経験をした人材が必要になるだとか、あるいは海外に出ることそのものに価値があると思われた時代もあったのだろうが、もうそういうおめでたい時代が終わり、皆が「冷静」になっただけなのではないか。そうした日本の旧態依然とした雇用・経済慣行を脇に置いて、若者の内向き志向を若者の志だとかハングリー精神のせいにするのは、いささか短絡的で、答えのない議論のように思われてならない。日本の人材の国際競争力強化は、日本企業がまず自らの人材の内向き志向をやめ、留学や海外勤務への明確なリターンを示さなければ、到底なしえない。そしてそれをなし得なければ、日本企業は永遠に欧米企業に追い付けず、アジア新興国の企業にも遅かれ早かれ敗れるだろう。


今日は日本が大戦に敗れた日である。
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全く同感です。
by morishi424 2010.11.10 Wed 23:20 EDIT
日本の若者が、冷静に海外経験のリスク・リターンを測って行動しており、日本企業・日本社会が、若者の海外進出を促すようなインセンティブの変更を行わないといけないという点では全く同感です。
ただ、日本の若者側にも、マインドセットを変える必要があるかと思います。海外経験のリスク・リターンは現在の日本国内だけで見ればそれほど魅力的ではないが、世界全体を見た際、もしくは将来国境をまたがる人材移動が活発になり、各国の国境がより薄れていった際に、魅力的になりうる(もしくはリスクが大きくなる)という点に気づくべきだと思います。
Re. 全く同感です。
by Shintaro 2010.11.14 Sun 23:08 EDIT
morishi424さん、コメントどうもありがとうございます。
ご指摘の点、ごもっともだと思います。
国境をまたがる人材移動は既に超活発だと思っています。
マンハッタンやロンドンで働く人の多様性、オバマ政権では減ったとはいえ、米国のホワイトハウス及びその周辺機関で働く外国人(米国人以外)の割合をみても、強くそう感じます。
ただ、日本だけがそうではなく、そうでなくても成り立ってしまうだけ日本が中途半端に大きく豊かであるというのが、難しい点だと思っています。
結局は、morishi424さんがおっしゃるように、若者がマインドセットを変えるしかないのですが、それを促すために自分に何ができるか、考える日々です。
とりあえず優秀な学生さんを弊社にお誘いすることと、自分の娘に英語を教えるくらいしかできていませんが・・・
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経営コンサルタント
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旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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