6日目、Japan Trekも折り返しを過ぎ、一行は河口湖で富士山を愛でた後、東京に入る。
夜は東京ドームでレッドソックスの試合を観戦。相撲観戦、広島平和祈念資料館訪問、トヨタ訪問に続き、希望者だけで100名を越える規模。何をやってもこの人数になるのは、改めて凄いことだと思う。
当然、目立つ。ボストンのメディアにも取り上げられたようである。
そして7日目は、東京地区での企業訪問。
今回の旅行のオーガナイザーは、ロジ担当、マーケティング、ツアー担当、といった具合に、いくつかの担当に分かれて準備を進めてきた。私は、SMさん、YA君とともに、企業訪問を担当している。
スローンを含め数多くの海外ビジネススクールが日本視察旅行を行っているが、旅行中に訪問する企業の数は、どの学校の旅行においても年々減少しているという。インドや中国、イスラエルなどを訪ねる同様の旅行で企業訪問が増えているのとは好対照である。確かに、ここ10数年の日本経済および日本企業の凋落ぶりを考えれば、ある程度自然な流れなのかもしれないが、腐っても鯛、まだまだ日本の企業には世界に誇るものがあるはずである。それが幻想なのかどうかは、スローンノ学生にできるだけ現実に見てもらうことで、明らかになるのではないか。そんな思いから、今回の旅行では、(恐らく)過去最大となる計8社(トヨタ、NTTドコモ、ソニー、セブン-イレブン・ジャパン、資生堂、新生銀行、ソニー・コンピュータエンタテイメント、コナミ)の訪問を手配した。この日は、このうちトヨタを除く7社を、3グループに分かれて訪問したわけであるが、全体としては、やはり日本企業もまだまだ捨てたものではない、という思い(かなり贔屓目だが)を確認するとともに、その強みを最大限に発揮するための「国際化」は、この古い言葉が叫ばれ始めてからの恐ろしいほどの年月にも関わらずまだまだ道半ばであるとも感じた。
以下、自分が訪問させていただいた企業での視察内容、発見などに、簡単に触れておく。
コナミ
企業紹介、ゲーム製作過程のプレゼンテーションを拝聴し、ゲーム製作者の研修施設を見学させていただく。
特に、ゲーム製作過程の紹介は、実際のクリエイターの方にお話しいただいたこともあり、非常に興味深かった。ゲームには益々リアリティーが求められるようになり、「メタルギア・ソリッド」というシリーズの場合、製作担当者が実際に軍事訓練を受けて射撃のやり方や戦闘地域での移動の仕方などを学んだり、ジャングルの雰囲気を知るために屋久島に取材に行ったりと、演出の材料を五感で感じ取り、右脳を刺激するために、かなりの手間隙と予算をかけているらしい。一方で、そうした「上流行程」におけるリアリティーの作り込みとあわせて、最終段階での遊びやすさの調整が、ゲームとしての完成度・面白さを決定的に左右するのだという。前者は映画製作にも似た作業であるが、後者はゲーム、あるいはソフトウェアに独特の、地味で根気のいる作業といえるだろう。ここでの緻密な作業、徹底したこだわりは、まさに日本のものづくり、というべきもので、ゲーム産業においてハードウェアのみならずソフトウェアでも日本企業が世界市場をリードしている理由に触れたような気がした。
また、ポイントが離れるが、「ユーザーからの意見などはどのように収集し、どの段階でゲーム作りに反映するのか」という参加者の質問に対して、「最近はゲームもオンライン対戦ができるようになっており、人気を博しているが、そのオンラインでの対戦の模様をモニターして、ゲーム作りに活用している」という説明があったのは、ちょっとした目うろこであった。
セブン-イレブン・ジャパン
企業紹介のVTRの見学の後、Q&Aセッション、そして実際の店舗に場所を移しての商品や店舗設計などの説明を伺う。
特にQ&Aセッションでは、日米のセブン-イレブンおよびコンビニ産業の違い、今後のセブン-イレブンの世界戦略、国内コンビニ産業の成長可能性などについて、用意された膨大なバックアップ資料を効果的に活用されながら、具体的な数値を交えて非常にわかりやすい解説をいただいた。
- 日本のコンビニの売上は弁当・惣菜などの生鮮食品が主力であるのに対し、米国のコンビニはガソリン、タバコ、酒が売上の大半を占め、生鮮食品の割合は微々たるものであるらしい。逆に言えば、優れた商品開発と単品管理で生鮮食品を強化すれば、一店舗あたりの売上はまだまだ伸びる
- マクドナルドが世界約120カ国で31,000店舗を有するのに対し、セブン-イレブンはまだ17カ国にしか進出していないにも関わらず既に店舗数は32,000を超えていることから、そのグローバルな成長可能性が推察される。その成長のペースは驚異的で、2007年は一年間で世界合計約2,000店を出店、毎日4時間に一店のペースで出店していることになる
- コンビニという業態上、商品構成は進出する市場ごとに変化させなければならない。日本でおにぎりを置いているスペースには、米国ではピザやポテトが並ぶし、南米にいけばトルティーヤなどが並ぶ。しかし、店舗経営の根本である単品管理は、世界中で通じるプラクティスであると確信している
Trek参加前はそもそもセブン-イレブンが今や日本の企業であるということを知らない参加者がほとんどであったが、訪問後は強い感銘を受けて、表情が変わっていた。
海外担当の中堅社員の方が、流暢な英語で解説いただいたことも、参加者の理解向上に大きな助けとなった。
資生堂
メイクアップ・アーティストによる化粧の実演の後、国際事業担当執行役員のフィッシャー氏によるプレゼンテーションを拝聴する。
資生堂の戦略に限らず、日本および日本人の特質、そこでグローバルなビジネスを展開することの長所と短所を、自身の経験に基づいて率直な言葉で語ってくださった。
- 資生堂の社員は、美に対する意識が極めて高く、洗練されている。そしてこれは、日本人全体にもいえることである
- 日本のビジネスマンは、会社に入る段階では欧米のそれらに比べて能力的に劣るとは思わないが、企業に入ってから、きちんとした幹部教育、正しい視点・考え方が与えられていないために、中堅以上になると欧米より能力が劣るようである。終身雇用や日本的経営が全部悪いとはいわないが、明らかにその弊害で中ばかりみていることの影響であり、変わるべきところは変わらなければならない
夜は六本木ヒルズの51階を、三菱商事の力で使わせていただいて、卒業生を交えてのパーティー。
そしてその後は、六本木や西麻布のクラブへと繰り出す。
企業訪問で見聞きしたことを覚えてくれればよいが・・・。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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