「 Japan Trek 1 ...いよいよ出発 」
スローン学生による日本旅行が始まった。
朝3時半、まだ家族が寝ている時間に自宅を発ち、空港で他の学生と合流して、サンフランシスコ経由で大阪・関西空港に向かう。妻と娘二人を残して行くことの心苦しさと、日本に「行って、帰る」ということの概念的な不自然さは解消されないままとなったが、見送ってくれた妻を見るに、家族のところから出発して家族のもとに帰る、と捉えれば、後者の不自然さは大した問題ではないと片付けることができた。
既述したように、今回の旅行は参加学生180名、配偶者45名という、スローン始まって以来の規模となった。うち、124名は米国人(正確には米国市民権を持つもの)であり、圧倒的多数である。彼らに次いで多いのは、スペイン人(8名)、メキシコ人(7名)などのラテン系の連中で、ラテンアメリカにスペインとイタリアを加えると合計33名だが、それでも米国人の1/4にしか過ぎない。
自分の中での今回の最大のテーマは、彼らがなぜ日本に行こうと思うのか、そして日本で彼らが何を感じるのかを探ることであるが、この参加者構成を考えると、「彼ら」を少なくとも米国人、ラテン系、その他、くらいには分けて捉えた方が良さそうである。
日本への道すがら、山本七平氏の「日本人とアメリカ人」を読み返した。文字通り、日本人と米国人の思考様式、行動様式の違いについて、分析的な示唆を与えてくれる書である。その中で語られているいくつかのキーワードの中で、以下のような対比は今回の旅行により分かりやすい視座を供しているように感じた。
- 米国人は「空間的思考」、日本人は「歴史的思考」
つまり、米国人にとっては、米国という空間にあるものは何でも米国のものである。自由の女神も、チャイナタウンも、イスラムのモスクも、寿司屋も、米国の領内にあるものすべてが「米国」を形成している。高々200年強の歴史しかない人口国家においては、それ以外に国を規定する術もないのかもしれない。一方で、日本人にとってはそうはいかない。例え東京の真ん中であっても、「これが日本だ」と言われると違和感を覚えるものは無数にある。つまり、過去からの日本の文化的・民俗的特徴に照らし合わせて、それと一貫しているものを日本のものと捉える。従い、米国の例とは逆に、海外にある「日本的」なもの、例えばパリの日本庭園は、日本のものと捉えられる。こうした視点を踏まえると、今回の旅行における米国人参加者は、日本で見るものを、何が日本的で何がそうでないかという区別なく、すべて「日本」として捉えるのではないか、と予想される。まあそれはそれで強ち間違いではないのだろうが、10日後の彼らの日本像がどうなっているのか、予想がつかない。
- 米国人は「フェアではない」と怒る、日本人は「生意気だ」と怒る
例えば授業で、あまりにも頻繁に、かつ長々と発言をする生徒がいたとする。これに他の学生が批判する際、日本人的には「生意気なヤツだ」という表現が多いように思われるが、米国人的には「他の学生の発言・学習の機会を阻害しており、フェアではない」という批判になる。これを今回の旅行に当てはめると、例えば飛行機の出発予定時刻の2時間前を集合時間として設定した際に、それより遅れて現れて、ちゃっかり飛行機に乗れた人間がいたりすると、「自分ももう少し家でゆっくりしてから来たかったのに、これではフェアではない」という文句がでることが予想される。今回の旅行では日本入りしてからも参加者に様々なオプションを与えているし、事前予約してもらっているツアーやディナーも、多かれ少なかれキャンセルや追加参加の希望がでるだろう。そうしたリクエストにも、フェアに対応している限り、大きな不満はでないということか。
こんなことを考えながら、スローン学生の列島大移動を観察してみたい。
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経営コンサルタント
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世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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