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「 Prof. Takehiko Yamamoto ...科学技術のもつ安全保障上の意味 」
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 ときどき参加させてもらっているボストン日本人研究者交流会の月次講演、今月は早稲田大学の山本武彦教授が演題に立つということで、聞きに行ってきた。演題は、「東アジアにおける科学技術のもつ安全保障上の意味」。恐らく多くのビジネススクール学生がそうであるように、私も普段はビジネスに関係した話題、言い換えれば「民間レベル」の問題にばかり注目したり考えたりしているので、軍事、外交、規制といった国家レベルの論点には疎くなっている。一方で、こうした上層構造レベルの論点は、民間のビジネス論点を考える上では「外部要件」として半ば諦めの境地で見られるものの、その重要性は今更強調するまでもなく、少なくとも問題の所在や議論の方向性を理解しておくことは必須であろう。というわけで、勉強させてもらいに行った。
以下、私が理解した範囲での簡単な要約を記しておく。
  • 安全保障戦略(Geo-strategy)は、地政学(Geo-politics)と地経学(Geo-economics)からなり、これら2つの要素を媒介する変数として、科学技術の発展・育成・管理戦略がある。教授はこれを地技学(Geo-science and technology)と呼ぶ
  •  両世界大戦期から冷戦期にかけて、世界の科学技術の進歩は軍需産業がリードしてきたが、現在(80年代以降)はむしろ民需産業がリードするかたちになり、民間経済のグローバル化と相まって、こうした技術の囲い込み、コントロールが大きな政策争点となっている
    • かつては軍需から民需への技術転用(Spin-off)が民需経済の技術革新を促してきた。パソコン、インターネットなどがその典型例。しかし今では、軍需・民需の技術上の垣根がほぼなくなり、民需用として開発された技術が軍需に転用される(Spin-on)方が多くなっている。例えば飛行機の機影をレーダーで捉えられなくするステルス技術は、もともとはTDKが電子レンジ用に開発した技術
    • 民需用として開発され、世界中に伝播した技術が、伝わった先で軍需転用され、自国の安全保障を脅かす、という可能性が高まり、そうした実例も増えている
    • 9.11のテロも、民需技術(航空機、超高層ビル)を最大限に利用したテロという見方もでき、その意味では科学技術の大いなる逆説、ともいえる
    • これらをコントロールするために米国では特に80年代以降様々な政策がとられてきた。安全保障上重要な技術を有する米国企業への外国人・法人の投資を規制するForeign Investment & National Security Actや、米国で活動する技術者の米国からの海外渡航を規制するDeemed Export Controlはその典型例(ちなみに後で知ったことだが、MITの研究者もしっかりDeemed Exportの規制対象となっている
  • 日本でもこうした争点について近年議論が行われるようになり、いくつかの規制も敷かれているが、北朝鮮をはじめとする東アジアの安全保障上の脅威を踏まえ、より慎重に対応する必要がある
    • Jパワー社の買収で話題となった2007年の外為法26条改正(対内直接投資の自由化を原則としつつ、国際的な投資ルールの枠内で、安全保障等の理由に基づき、一部業種に限定して対内直接投資に対する規制(審査付事前届出制度)を導入)は、米国の規制に倣った技術囲い込みの事例
    • しかしながら、現在もまだ日本の安全保障に関わる国産技術が東アジア諸国に流れている。例えば北朝鮮には、主に台湾経由で技術が伝えられている。テポドンの主要技術も、多くは日本の技術だという説もある

山本教授のお話を伺ったのは初めてだったが、ある意味で典型的な日本の研究者という感じで、お話の背後に圧倒的な教養と深い知識を感じさせられる一方で、講演は論旨・結論がもう一つはっきりせず、ちょっともったいない気がした。上記のまとめも、教授がこのようにお話しになったわけではなく、前後する議論を私なりに整理したものなので、もしかしたら教授が本当に強調したかったポイントは他にあるのかもしれない。

ともかく、こうした論点は重要だが普段気に留めないポイントであり、いろいろと考えさせられた。ビジネスをやる上では、科学技術の発展は一般的に「良いこと」であり、時にはCDがレコードを駆逐したような既存技術の陳腐化という文脈で「脅威」になることはあっても、全体としては大いに奨励されるべきものである。そしてその発展のために国際的な協力が必要であればやるべきだろうし、研究の果実として得られた新技術やそれを活用した新製品は、できるだけ多くの市場に販売されるべきだろう。しかしそれがテロなどの脅威を増幅し、思ってもみないシッペ返しとなる可能性もある…。人口増幅と資源消費を加速させる科学技術の進歩に対してブレーキをかける、科学技術そのものの内在的な制御の仕組みなのかもしれない。
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経営コンサルタント
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世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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