昨夜は、普段の仕事や、あるいは大学時代の学園祭などとも少し違う、心地良い疲労、高揚感、笑い、達成感、連帯感を味わうことが出来た。恐らく、最初の学期で最も思い出深いイベントの一つになるだろう。
C-functionとは、ほぼ毎週木曜日に開かれるスローン学生のパーティーのことである。学校公認行事で、多くは校舎近くのWalker Memorialというホールで行われる。名前の由来は経済学のConsumption Function(消費係数。この場合は酒の消費)だとか、異文化交流を促すCultural Functionの略だとか言われているが、定かではない。学校主催(経費全額学校負担)で行われることも多いが、半数くらいは特定の地域の学生がチームを成して運営し、Latin C-functionだとか、Euro C-functionだとかという名を冠する。そうした一連の「異文化交流系」C-functionの第一弾が、昨夜開催されたJapan C-functionである。別に誰かが日本を最初に紹介しろと言った訳ではなく、Class of 2008(我々の一代先輩)が「一番にやりたいです!」と立候補し、そう決まったらしい。どうせやるなら一番が良いので、望むところである。
我々Class of 2009の日本人学生計12名も、ケータリングなどのロジの手伝いに加えて、メインイベントの一つとして20分のステージを仰せつかっており、全員がボストンに揃う前から企画を練り、8月から毎週のように練習してきた。
20分は、長い。
しかも12名全員がそれぞれに個性を活かしつつ活躍するのが理想である。
完全に何か既成のもののコピーないしパロディーで乗り切るわけにもいかず、結局は山手線ツアーを模したコメディーと、NHKコメディー「サラリーマンNEO」に登場する「サラリーマン体操」の抜粋、そしてBilly's Boot-campを模したメンバー紹介の三本構成になったが、サラリーマン体操以外はすべて手作り、サラリーマン体操も英語化は自作、ということで、かなりの工数を要した。この手の「劇」は、多分に自己満足のところがあって、勢いがつくと工数を過剰投資してしまいがちだが、最初の学期、あるいは米国での生活が始まって間もない頃に、まあよくやったものだと後になって思う。
パーティー当日は、ステージの位置が決まらなかったり、機材が微妙に足りなかったり、結果リハーサルがきちんとできなかったりで、文字通り直前までバタバタしていたが、そうした裏方の事情をよそに、会場の前にはまさに長蛇の列。受付でIDを確認して飲酒許可のリストバンドを渡す係を務めていたが、渡しても渡しても次から次へと人がくる。Best C-functionに輝いた昨年のJapan C-functionの入場者数600名を越えることを目標にし、さまざまな宣伝活動を行ってきていたが、実際にどっと人が来るとやはり感動する。途中からは、スローンやMITの学生以外の、例えばHBSやKennedy Schoolの学生も、人数を増やしてやれとばかりに受け入れていったが、そんなこともあってか結果的には参加者総数はHistrical recordの900人越えとなった。
当然ながら、ホールの中は大混雑。数百人分用意した寿司はあっという間に売り切れ、山のようにあった麒麟麦酒(同社からの差し入れ)は飲み干され、まさにConsumption Functionの様相。そんな中、30分ほど押しながらプログラムは進み、我々の出番も近づく。
我々のステージの直前は、プロ奏者のグループによる大太鼓の演奏。ステージ裏で衣装に着替える我々の士気も上がる。
私の担当はMC。仕事柄、人前でしゃべることには不慣れではないが、英語で笑いを獲りにいくのはなかなか経験不足。リハーサルまでの練習ではカムこともしばしばあり、私以上に周りが心配だったのではないかと思う。ただ、ステージの袖から会場を覗き、多くのゲストがステージ近くに陣取ってショーを待っているのをみると、アドレナリンが分泌され、妙に落ち着いた。職場の先輩・同僚から「あいつは客が多い方が嬉しそうに話をする」と何度も言われたことを思い出す。まあ、この場面では損な資質ではない。
ショーは、これ以上望めないくらい成功裏に終わった。全体に練習でもなかったくらいにスムーズに進行し、大胆ながらエスプリがアクションも秀逸、無謀とも思われたMCとピアノ生演奏との掛け合いもNo Miss、会場の大盛り上がりで拍手喝采。もちろん細かなミスやトチリを挙げればきりがないし、笑いを獲りに行ったところでスベったり、想定外のところでウケたりと、何だか良くわからないところもあったが、そんなことを忘れるくらい、素晴らしかった。MCとして会場を見ていても、観客が引き込まれていくのを感じたし、ステージ終了後にホールを歩いていると、何人もの同級生やTeaching Assistantから賞賛の言葉をもらった。何より一夜明けた今日、メンバー数人とショーを録画したフィルムの鑑賞会を開いたのだが、初めてみた自分たちのショーに、涙を流して大笑いした。DVDにして売りに出したいくらいの出来栄えと、皆で自画自賛した。
本当に笑いと感動のイベントであったが、最後に一連の活動を通じて感じたのは、大げさにいうと新しいチームのカタチのようなものである。
我々日本人同期12名は、当然ながらまだ互いを良く知らない段階からこのイベントの準備を始め、またイベントへの思い入れも正直言ってあまりないところからスタートしていたこともあり、明確なリーダーを決めないまま、準備作業を進めていった。そして結局最後までリーダーを明確化せず、必要な作業は都度分担するかたちで最後まで準備をし、これだけの「作品」を仕上げるに至った。これは私の経験にはないチームのカタチであるし、MBA留学の大きな目的の一つでもある「リーダーシップのあり方を考える」という観点からも、多くの示唆が得られそうな体験となった。
来春の日本学生旅行「Japan Trek」など、今後もこのチームで行うであろう活動が、楽しみになった。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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