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「 Team Project 3 ...米国企業の人間関係、表と裏 」
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10月初めから続けてきた「組織プロセス」の課題プロジェクトが、この日クライアント企業への報告をもって完了した。
フィーを頂き、仕事として取り組んできたプロジェクトとは、もちろん身の入れ方もアプローチも違うし、結果として得られた示唆や提案の深さ、鋭さも違うが、フラットなチーム構造の中で外国人のチームメートを引っ張りながらここまできたことには、多少の感慨を覚える。
また、今日に限って総括するならば、1時間半のミーティングの間に繰り広げられたクライアント企業幹部の間の人間的な駆け引き、表と裏の顔の行き交う姿が非常に興味深く、印象的だった。


大学への報告を12月の第一週に終え、プロジェクトはクライアントとして協力してくれたソフトウェア・ベンチャー企業への報告(プレゼン)を残すのみとなった。
大学によるプロジェクトの「採点」は、既に終えた大学への報告に基づいて行われるので、残された報告は我々の学業成績にはまったく影響しないと言っても過言ではない。一方で、今週から来週にかけては4教科の期末試験がとり行われる。自然と、チームメンバーの中には明確にプロジェクトへの関与の姿勢において差が出る。自分は、プロジェクトのリーダーであったことに加え、コンサルタントの端くれとしての倫理観・責任感もあり、最後まできちんとシゴトをしようと決めていた。

ただ、この最終プレゼンの準備は、予想外にもめた。
もめたというのは、インタビュー等を通じて我々が掴んだ事実、それに基づく考察、提案を、どこまで伝え、どこは伝えないか(あるいはオブラートに包んでしまうか)についてである。
大学の授業におけるプロジェクトといえど、クライアント企業とは守秘義務契約を結んでいるので、どの会社か特定できる具体的な記述はできないが、クライアント企業の抱えていた組織課題の代表的なものは、例えば
・マーケティング部隊が組織内で相対的に強くなりすぎ、研究開発部隊から批判がでていること
・機能別組織体制が一応整い、各担当の役員まで決まったものの、社長が依然としてすべて直轄で動かしたがり、実質的に担当の役員に権限委譲していないこと
などである。
一方で、我々のこれまでの活動を支援し、取材協力してくれていたのは、他でもないそのマーケ部隊のVPであり、社長であった。当然、上記のようなメッセージを直接的に伝えると、その衝撃は大きいだろう。もしかすると
「そんなことはない。誰だ、そんなことを君らに言ったやつは」
と社長が大声で叫び、その場でミーティングは中断、他の提案・指摘も含めてすべて水泡に帰す、ということも考えられる。
米国人のチームメートはこの点を気にした。
曰く、重要と思われるポイントをすべて提案に入れると、答案としては100点かもしれないが、その中のいくつかが相手の機嫌を損なわせ、何も実行されないかもしれない。
100点の提案をしてまったく一顧だにされなかったプロジェクトよりも、70点の提案だが確実に実行されるプロジェクトの方が良いプロジェクトだ、と。
一般論として、この主張には合意する。しかし問題は、どこまでが相手の冷静さを保てる範囲で、どこからが相手がキレるところか、というのがわからないことである。こうなると、同じ米国人であり、同じ技術者出身であるチームメートの「感覚」に、私は論理的に反論することができない。
かくして、私からみれば過度に刺激を取り除いた、あまり面白くないプレゼンが出来上がっていた。

プレゼンは、その技術者出身の米国人チームメートが行った。軽いジョークを入れながら、カジュアルな雰囲気で説明を進めていく。棘を抜いたバラなので、相手にとって痛い内容ではなく、ご指摘ごもっとも、という顔で社長もきいている。
但し、こうなるとちょっと面白くないのが、同席した他の幹部である。各機能部門を代表する彼らは、多かれ少なかれ、社長に言いたいことがある。そして我々の口から、匿名の意見として、そうした苦言が伝えられることを期待していた。我々とのインタビューの中では「社長がこの会社のボトルネックだ」とまで言い切った幹部もいたくらいだ。
ところが、披露されたのは意外にもあっさりとした内容。
何人かの幹部は、
「従業員から、他に重要な指摘はなかったか」
と質疑応答の際に食い下がってきたり、
「社長、彼らが本当にここで伝えたかったのはカクカクシカジカなことだと思います」
と我々の発言をいいように解釈しようとしたりしていた。

窓から明るい光が差しこむ広めの会議室で、大きなリクライニング・チェアーに足を組んで座った彼らの態度は、非常にリラックスした、何でも話せそうな雰囲気を演出していた。
しかし実態は、彼らは何も本音を話していない。
概ね一人社長のみがいいたいことを言い、周りはそれに合わせているだけだ。
ただ、相槌を打ちながらも、遠まわしに自分の主張に議論を誘導しようとはする。
ベンチャーとはいえ従業員の平均年齢が40代を越えているので、彼らはあれほど紳士的なだけだろうか。ともかく、頭の中にあった典型的な米国人のように、傍若無人に言いたいことをいう、という感じではない。
チームメートが報告から除外した部分は、やはり除かれているべきだったのか…。

いずれにせよ、今日の報告内容から、クライアント企業の中で何がしかの建設的な議論が交わされ、良い方向への変化が少しでもおきれば、それほど嬉しいことはない。
ご協力くださったクライアント企業に、心から感謝したい。

<関連記事>
Team Project 2
Team Project

<12月20日 補足>
クライアントから連絡が入り、我々の提案をより具体化すべく、まずは人事コンサルタントを雇った、とのことであった。


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経営コンサルタント
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世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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