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「 PE investment in Japan ...日本のPE投資機会 」
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PEファームの東京オフィスにインターンの場を移して、3週間半が経過した。
なかなか個別案件のことは書けないが、いろいろと考えさせられる日々である。

投資を受ける会社の立場に立った場合、PEファームの投資を受ける理由は、会社側の意図と無関係な敵対的買収や投資家間の売買を除くと、以下の6つに分類されると思う。

①会社再建
②創業者およびその一族による事業継承
③大企業の一部事業切り離し
④敵対的買収への対抗(ホワイトナイト)
⑤長期的な成長戦略のための経営の自由度確保
⑥他社買収のためのパートナーシップ

①は、今年はまだ記憶にないが、昨年頃までの日本市場でよくみられた形態である。代表的なところでは、長銀(新生銀行)、東京スター銀行、(最近話題の)すかいらーく、フジタなどがこれに該当する。その他、ダイエー、カネボウなど、産業再生機構が関係した案件も、機構の名前が指すとおり、このカテゴリーに分類されるだろう。
これは、バブル崩壊以降、放漫経営が祟って二進も三進もいかなくなった企業に対して、あっさり倒産させてしまうと社会的・金融的インパクトが大きい場合に、逃げ道としてファンドが活用されたパターンで、90年代後半から日本に投資ファンドが入ってくる際の大きな切り口となった。
そういう意味では、歴史の浅い日本のPE投資においては最も「伝統的」な投資パターンであるが、その顛末をみている限り、本質的な意味でファンドが企業の「再生」に貢献し、またそれがファンドにとっての主たる収益源になった例というのは、なかなかお目にかかれない。多くの場合、「倒産させては元も子もない」と思っている関係者や市場の素人っぷりに付け込んで、破格の保証を国につけさせたり、あきれるほどの債権放棄を銀行にさせたり、驚くような条件の優先株を発行させたりと、要するに企業の再生如何に関わらず絶対にファンドが儲かる仕組みの上に投資が実行されている。世に言う、「ハゲタカ」型投資である。おいしい時代に日本の国や金融機関がカモにされたとしか言いようがなく、またたちの悪いことにそうしたファンドには国や金融機関のエラい人が一枚噛んでいたりして、確信犯的なニオイのする場合も少なくない。最近では、こうしたおいしい案件が少なくなってきたこともあり、特に産業再生機構絡みの案件を引き受けた国内系ファンドなどは、文字通り投資先企業の再生・価値向上による投資先とファンドの共存共栄を謳っているが、それで本当に企業が再生してファンドに十分なリターンが出るかどうかの結論をみるには、あと数年待たなければならないだろう。

②は、創業家が経営権も握っている(所有と経営が一致している)上場企業の多い日本に特徴的な形態でもある。オーナー社長が、確実に一族に会社を継承するために一旦非公開化して意に沿わない株主を排除してしまうパターンや、逆に創業者一族に事業の後継者がおらず、現経営陣や新たな経営者に所有権ごと継承してしまいたい場合(中小企業に多い)などがある。この場合も、投資を受ける理由が企業の本質的な成長のための戦略的理由でないため、ファンド側としては慎重に案件を見極めないと、企業価値が向上せずリターンがでないリスクが付きまとう。

③は、産業革命以来日本経済の発展を牽引しつつ膨張してきた巨大企業グループが、国際競争の激化とバブル崩壊の影響で「選択と集中」を迫られ、増加してきたパターン。特に製造業では、売却側の企業にとっては非戦略部門でも、特色のある固有技術をもっていたり、ニッチ分野での強固なシェアを有していたりする場合も多く、国内外の投資ファンドが日本で最も期待する形態の一つと言えるだろう。欠点としては、そうした有望形態であるが故にファンドからの注目度も高く、どうしてもオークション(競売)になって買収価格が吊り上がる場合が多いことだろう。どんな案件でも、馬鹿げた値段で買うと、リターンがでない。

④は、ある意味でもっとも受身の、非戦略的な行動と言えるかもしれない。多くの場合、株主価値軽視の経営姿勢のために株価が極端に下がっていて、乗っ取り屋と呼ばれるようなバイアウト・ファンドや、ライブドアのような新興勢力に狙われ、慌てて「もうちょっとマシ」な買い手を探す、というパターンである。ファンドではないが、ドンキホーテに狙われたオリジン東秀が「ドンキに買われるくらいなら」とイオンに駆け込んだ例のように、結果的にシナジーが期待できる企業買収に至る例もあるが、ホワイトナイトがファンドの場合は、結局はリターンの追及が性なので、最初の乗っ取り屋がやろうとしたことに近い結果になりがちであろう。

一方、⑤と⑥は、上記のような「負の遺産」に端を発する例とは異なり、むしろ前向き企業の成長戦略のために積極的にファンドを活用するパターンである。

⑤は、短期的な株価の下落や、大きな投資(設備投資や研究開発、企業買収)に伴う収益悪化を伴いそうな抜本的かつ中長期的な成長戦略を採るために、短期的なリターンを求める株主から自由になろう、というものである。外国人株主の比率が高まり、日本人株主も「モノを言う」ようになって、益々株主の短期利益志向が強まる中、こうした中長期成長戦略に株主から「ノー」を突きつけられる可能性は高まっている。また株価が下がれば、④のパターンで議論したような乗っ取り屋に蚕食されるリスクにも晒される。ならば、と非公開化に踏み切る企業は、ここ5年ほどの間にいくつかの例がみられた。そして自社だけでは非公開化のノウハウがない、などの場合に、ファンドが入る可能性もある。米国ではそれなりにあるパターンながら、これまで日本でこのパターンの案件が行われた記憶はない。

最後に、⑥であるが、特に成熟産業で国内での成長が見込めず、一方でキャッシュがそれなりにある場合などで、ファンドのネットワークとノウハウを借りて海外プレイヤーの買収を仕掛けよう、という例などが該当する。例えば製鉄業では、ミタルが野心的な買収を繰り広げる中、新日鉄もブラジルの大手プレイヤーに出資をしたが、わずか1.7%の議決権を握ったに過ぎない。これをファンドと手を組むことで、一気に大きな範囲の議決権を取ってしまおう、というパターンである。

要するに日本では、①~④に挙げたような、「負の遺産」の清算という文脈の中での投資が、少なくともこれまでのところはほとんどであった。従って、案件としても玉石混交、というよりはむしろ「石」の方が多かったであろうから、リターンを出すためには、競争原理が働かない環境下で、良くわかっていない、あるいは切羽詰った人たちを相手に法外な条件で買収を成立させて、市場が勃興してきたのをみて参入してきた他のファンドや外資系企業、新興企業に売り抜ける、というパターンが主とならざるを得なかっただろうし、実際それが多かった。

今後はどうか。
良いニュースは、日本企業も少しずつファンドの使い方が旨くなり、⑤⑥のような案件や、そこまで行かなくともより積極的なかたちでの③のような案件が出てきていることだろう。
一方で悪いニュースは、案件の増加を上回るペースでファンドが数・金額ともに増えすぎて、価格競争が過激化していること。また金融機関の業績悪化にともなうクレジットの縮小で投資に伴う借入が難しくなり、ファンドとしてのレバレッジがきかず、リターンが減る、ないしはそもそも投資ができない、ということが挙げられるだろう。

つまり、数年前のようにおいしい仕事ではない、ということである。
恐らくこれは、ちょっと齧った程度のインターンでも気づくことなので、日本でこの業界に関わっている人であれば、多くが気づいていることだと思う。
問題は、気づいてからどうするか、ということ。
トヨタが燃料高に伴う需要縮退を踏まえて生産調整に踏み切ったように、市場環境が思わしくないから投資の手を緩めます、というふうにはなかなかいかないのが、この業界の辛いところではないか、と見える。
もともと、グローバルファンドの日本事務所であれば、これまで年間1-2件の投資を実行していれば立派なものなので、これを減らすとなると、1年間投資をまったくしない、ということになる。これは、経営的にも組織運営的にもなかなかできるものではない。ファンドというのは、どんなに環境が悪くても、投資せざるを得ない。投資すれば損をするかもしれないし、儲かるかもしれないが、投資しなければ絶対に儲けがでないからである。また、組織のスキルやモラル向上のためにも、実際の投資をある程度行っていることは必要条件だろう。せいぜいできることと言えば、投資案件の最低規模を小さくして間口を広げ、より広いスコープの中でマシなものを選ぶ、というくらいだと思われる。
更に問題を複雑化しているのが、ファンドで暮らす人々のインセンティブのあり方。案件からの実際のリターンではなく、いくら・何件投資をしたかが評価の重要なウェイトを占めているファーム・個人が存在するので、環境が良くないことは知りつつも、何でも取りに行ってしまう。

こうしてみてくると、PEファームの日本経済における意義はなくならないし、まだまだこれから必要とされる存在であるのは間違いなさそうである反面、これまでのやり方で濡れ手で粟をとっていたような人々は、今後1-2年のうちに市場から退場させられることだろう。
そしてファームとそこに関わる人々の数が適正化され、金融機関のキャパシティーも戻ってくると、また投資のチャンスが再生してくるのだと思われる。
それが何年先になるのかは読みきれないが、少なくともあと1年は、ビジネススクールで世の中から退場しているのが、結果的に良さそうである。

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経営コンサルタント
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自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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