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「 Beyond or with Capitalism …民主主義・資本主義の限界と経営コンサルティング 」
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昨年に引き続き、今年も所属するコンサルティング会社の社会貢献活動として、NPOへの無償コンサルティングを提供しようとしている。キャパシティーの関係等から年間2-3件しかプロジェクトをこなすことができないが、それでも昨年まで7法人8件の支援を行ってこられたのは、ファームの支援と仲間のコンサルタント諸氏の問題意識・意欲・スキルのお陰である。

今年最初の支援先となりそうなのは、ポラリスプロジェクトというNPO法人である。取り組んでいる社会問題は、人身取引。「性的搾取や労働力搾取を目的とした人身取引問題に取り組み、日本を人身取引問題のない社会にすることを目指」すことをミッションとして掲げ、ホットラインの運営、被害者への救出・隔離等の直接支援、入国管理官等への研修、各種啓蒙活動などを行っている、日本でもかなり唯一性の高いNPO法人である。一般にはあまり馴染みがないかと思われるが、日本は2004年に米国政府からある種の「警告」を受けたほど、先進国の中では人身取引を取り締まり、被害者を支援する法的・社会的な基盤の弱い国である。昨年一年間で公に摘発された人身取引事件はわずか19件と極めて少ないが、性的労働などのためにアジア・南米等の海外から売られてくる外国人、「出会い系サイト」などを通じて事件に巻き込まれる日本人の数は、年間に数百とも千近いとも言われる。しかしながら日本の法律では、人身取引被害者は売春、不法就労、不法入国、などの罪にとわれることはあっても、なかなか被害者としての地位を確立することが難しい。また誤解を恐れずに言えばあまり「明るい」話題でもないため、なかなか企業等からの支援が集まらない。現状彼らを財政的に支援しているのは、日本人としては恥ずかしながら、いわゆる外資系企業がほとんどである。ここに何とか、一般市民や日本企業をはじめとする企業からの寄付を獲得できないか、というのがプロジェクトのテーマとなる。

また、別のところで名前を紹介され、最近関心をもっているNPOに、メッシュサポートという団体がある。沖縄本島北部及び周辺離島地域への民間医療ヘリ派遣を行っているNPO法人である。同地域は交通網および救急医療のカバレッジが弱く、急性疾患や交通事故などが発生すると、実質的に医療を受けられないリスクが高い。公的な医療ヘリも存在するが、人口の多い沖縄本島中南部及びその周辺離島が主な守備範囲である。メッシュサポートでは、中古の機体を使ったり、サービスを簡素化したりと、コストの抑制に努められているが、それでも年間1億円ほどの運営資金が必要になる。沖縄では地元経済界や市民などが幅広く支援しており、募金箱も各地に設置されているそうだが、それでもこのままでは春先に資金が底をつき、ヘリの運航を休止せざるを得ないという。

その他、我々がこれまで支援させていただいてきたNPO法人はほぼ例外なくそうであるが、深刻で看過できない社会問題でありながら、資本主義・民主主義が仕組みとしてすくい上げることのできないニーズに取り組んでおり、それだけに成功へのハードルが高い。非常にざっくりと定義してしまえば、資本主義は経済合理性の論理、民主主義は数の論理である。パレート最適、多数決、最大多数の最大幸福…、いずれも同じような仕組みであり、それが近代における社会的な意思決定の速さと納得感を形成してきた。一方、少数の人間の生死にかかわる問題、人権にかかわる問題は、どちらの論理でもケアされない。法律で保障しようにも、結局は民主主義の論理の中で課題提起されなければ、環境整備されない。例えばポラリスが取り組み人身取引の問題に社会的支援を得るための最大の壁の一つは、問題の大きさ(被害者の数、発生件数など)が把握できないことである。法律・社会基盤が弱いから被害者が支援されず、実態が分からない。一方で被害者の数が分からないから、公的な対策を講じる意思決定が行えない。そしてたとえ数が分かっても、メッシュサポートのように、相対的に小さい問題として公的な援助がなされないという場合も存在する。結局は個別の人間の善意と良心による援助によるしかなく、したがってNPO法人が活躍している。

これを「資本主義・民主主義の限界」として批判することは簡単だが、それでは現実的な解にはならない。とりわけ、資本主義社会での勝ち方・生き残り方を考えることを生業としている我々経営コンサルタントとしては、何とかこの今の世の中の仕組みで、そうした社会問題に光があたり、対策活動が継続・拡大するための筋道・枠組みを考えなければ、プロボノをやっていることにならないだろう。また、私個人のバイアスとして、性悪説に立っており、また学生時代に唯物史観に傾倒したこともあって、人の善意に頼るというのは長続きしないと思っている。実際に、我々がこれまでに支援させていただいたNPOの中でも、最も事業として上手くいっているのは、フローレンスのように、資本主義という社会の仕組みと上手く折り合いをつけたビジネスモデルや戦略を遂行している団体の皆様である。

NPOを引っ張る社会起業家の皆様の熱い思いが水泡に帰さないためにも、新たな社会のかたちに目を向けつつも、とりあえず今の社会の仕組みを前提として、社会問題解決のため、今年も小なりともお手伝いができれば、と思う。

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経営コンサルタント
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世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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