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「 Not only Private Equity ...知恵の多角化 」
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私がサマーインターンをさせてもらっているプライベート・エクイティ・ファーム(PE)は、プライベート・エクイティ、つまり非公開株式への投資が生業であるが、数百名のスタッフと数兆円の資産を抱えるグループとしては、さまざまな金融分野をカバーしている。
コンサルタント出身者はマトリクス(タテとヨコのまじわる方眼紙のような表)が好きだが、金融も大きくわけると、縦軸に公開 vs 非公開、横軸に株式 vs 債券、という2 x 2の表に整理できる。
①非公開株式 ②公開株式
③非市場型債券 ④市場型債券
このうち①はさらに、ある程度成長した企業(売上規模で数百億円以上)への投資と黎明期のいわゆるベンチャー企業への投資に分けられ、私の所属するプライベートエクイティ部門が前者を、ヴェンチャー・キャピタル部門が後者をカバーしている。その他にも、いくつかのグループ会社が、この表をくまなくカバーしている。
具体的には、②を中心に投資をする会社(ヘッジファンド)、③④を中心に投資をする会社(債券投資ファーム)、そして②④を中心に投資をする会社(マクロ・ヘッジファンド)、といった具合である。

それぞれ儲けの仕組みが違うため、これらをくまなくカバーすることで全体としてのリスク抑制になるほか、市場動向などの知見の共有(もちろんグループ間の情報共有には一定の壁が設けられているが)が可能となる。
例えば③④に投資する債権投資ファームは、サブプライムの影響から企業買収の資金を銀行がなかなか出そうとしない中で、債券市場の動向を知り、さらには債券市場で資金調達するための窓口の機能を、PE部門に提供してくれている。

また、ヘッジファンドが二つあることも、このグループの面白いところである。
ひとつは、公開株式市場での取引が主。そこで割安なものを買い、割高なものを売っている。こちらは解りやすい。
解りにくく、またより面白いと思うモデルが、もう一つのヘッジファンドである。グループ企業で最も若い集団である彼らは、株式は勿論、債券やデリバティブなどにも投資する。ポイントはその投資基準が、マクロ指標による「あるべき姿」からの乖離具合にあること。人口、物価、気温、経済成長率、諸々の歩留まりなど、ありとあらゆるマクロ指標を集め、それらと様々な現象の因果関係の有無を定量的に明らかにし、因果関係、相関関係が認められ得る場合は、「あるべき姿」を特定する。それとの乖離が大きいときに、売り・買いの行動をとる。例えば、身近な例でいうと、ガソリン価格は原油価格の従属変数であるはず(原油価格が上がるとガソリン価格も上がる)で、データをみれば、どのくらいの価格差が、どのくらいのタイムラグでもたらされるか、解るはずである。これが解ったとして、現在のガソリン価格がそのモデルによる「あるべき価格」よりも安ければ買い、高ければ売る。そして「あるべき価格」に戻った際(コンバージェンス、という)に逆の取引をすれば、大もうけ、ということになる。実際に仮説どおりに価格が動いたときには、知的な達成感と興奮を味わえる、という。経験と勘による投資判断を徹底的な定量分析に置き換えたモデルで、非常に興味深い。

固定資産を持たないプロフェッショナル・ファームにおいて、最大の資産は人。
その人の知的レベルの高さを活かした多角化は、金銭的な欲求よりも、この知恵をあの分野に持ち込んで成功できるか、という知的チャレンジの追求課程のようにも感じられた。

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職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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