MITでは、スローンを含め、1月に定例の授業を開催していない(春学期の開始は2月から)。
代わりに、この期間はIAP(Individual Activity Period)と称して、実に多種多様な短期講座を開催している。扱うテーマは工学、数学、経済学などの学術領域は勿論、スポーツ、語学、料理、音楽、果てはビールのテイスティングまである。一部の例外を除いて、所属学部や現役・OBの別に関係なく、自由に登録・受講できるのも特徴である。
このIAPの講座の一つであるDistributed Leadership Workshopというのに、昨日から参加している。
スローンが主催している講座で、本校を代表する教授の一人であるThomas Maloneがリードしている。
45人限定、3日連続のクラスで、初日と二日目は朝8時半から夕方18時まで、三日目も朝8時半から午後15時までという、短期集中ながらなかなか負荷のかかる講座である。
内容は、その名の通り、Distributed Leadership Model (DLM)というリーダーシップを要素分解・定型化した一つの理論をもとに、その各要素の理解と実習、それを通じた各人のリーダーシップの育成を目指すものである。
Distributed Leadership Modelそのものの解説は、スローン作成の紹介ページに譲るが、私が理解した限りにおけるWorkshopの要旨は、以下のとおりである:
- Leadershipとは後天的に形成されるもの。LeadershipとCharacterは違う
- Leadershipとは、Visioning、Sensemaking、Relating、Inventingという4つの要素から構成される。これらは相互に欠くことができず、すべてがバランス良く機能しなければならないが、一人の個人にすべてが備わっている必要はなく、二人以上の個人で分担することもできる
- Visionとは、天啓のように突如ひらめくものとは限らず、往々にして現実の緻密な観察や分析(Sensemaking)の中から帰納されるものである
- Sensemakingは、目的的(purposive)かつ全体的(collective)でなくてはならず、次の示唆を誘発するようなもの(generative)で、かつ動的に繰り返されるもの(dynamic)であるべきである。その過程で、我々は目の前の世界を「データ」に置換し、そこから意味合いを読み取っていくが、置換した「データ」はすでに現実世界から選択的に抜粋したものに過ぎない、ということを忘れてはならない(We don't describe the world we see. We see the world that we can describe)
- Visionは単なる願望ではなく、意識的に選択したものでなくてはならず、個人的なコミットメントが必要である(If there is no personal vision, there is no shared vision)
- Visionは自らの価値観(Value)と整合していなければならない。価値観を具体的に理解するヒントは、自分が死ぬときにどういう状態でいたいかを考えることである
参加者の中には、
「こんなもの、まったくの時間のムダだよ」
といって不貞腐れている人間も2-3名見受けられたが、私にとっては、部品部品で考えていた自分のVisionを時間をとって整理する良い機会になったし、普段何かひらめいたりすることの少ない自分でも人を引っ張るVisionを持てるかもしれないと、勇気を与えてくれる内容であった。
コンサルティングをしていると、よく「軸」という言葉を使う。
物事を整理・構造化するときの切り口ないし視点という意味で使われる場合と、価値観ないしVisionという意味で使われる場合があるように思うが、どちらの場合も「まっすぐ一本通っている、整合している」というところがポイントである。
そして「軸」のない分析、「軸」のない戦略、「軸」のない経営方針、あるいは「軸」のない生き方は、議論の中でも説得性を持ちえず厳しく糾弾されるし、実際にうまく機能しないことが多い。
2年という留学期間は、自分の中でのこの「軸」を再度整理・構築し、それを貫くことの意味合い・やり方などを学ぶ期間とも位置づけている。そしてその意味で、このWorkshopは滝打ち修行のような、落ち着きと思想の活性化を促す効果があったと思う。
まあ要するに、どんな概念的な話でも、ショーモナイと思って聞けばショーモナイし、想像力を働かせながらオモロイと思って聞けばオモロイ、ということです。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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