かつてのクライアントから、夕食に誘っていただいた。
ボストンの本社で研修があり、東京から5日間くらいの予定で来米されているとのことで、最終日の今日、寿司でも食べましょう、とお声かけいただいた。
コンサルタントをやっていて良かったと思う瞬間はいくつかあるが、こうした食事にお誘いいただき、かつてのプロジェクトの後日談を伺ったり、最近の業界の様子について話し合ったりするのは、そうした瞬間の一つであり、この上なく光栄に感じる瞬間である。
そもそもこの仕事、多大なフィーを頂戴しつつ、そのフィーを支払ってくれたクライアントに、相手の気に障ることを言うという、なかなか無茶な仕事である。それがさらに、プロジェクト、つまり契約期間が終わって随分と経ってから、わざわざ時間と費用を割いて食事をご馳走していただけるというのだから、普通に考えるとあり得ない。かろうじて、学校の先生や医師ならこれに近い状況もありえるかもしれないが、決定的に違うのは、この仕事の場合クライアントの方が往々にして年長者で、かつその業界の経験・知識は上、という点である。この日お会いしたクライアントも、私より一回り以上年長の、経験豊かなビジネスマンである。こういうお誘いをいただくと未だに、この方のこの瞬間の時間とカネの支出に見合う何かを自分は今日提供できるのだろうかと、喜びの反面不安に近い恐縮した気持ちになる。
この日も、そんな思いを反芻しながら、またこの方をクライアントとして従事したプロジェクトの到達と反省を思い起こし、今その会社(クライアントはプライベート・エクイティ・ファームで、プロジェクトの直接的な対象は彼らが投資した事業会社)がどうなっているか、自分がクライアントであったなら何をしているか、今後の必要なアクションは何か、などを考えながら、ボストンにある待合せのホテルまで、自宅から40分ほどの道のりを歩いていった。
東海岸に数店舗展開する有名な寿司屋で刺身などをツマミながら、いろいろとお話を伺う。当然ながら、自分たちがこちらで過ごしている間に、日本でかつて身を置いていた「現実」が着々と動いていることを思い知らされる。アルコールも加わり、時間と空間が錯綜する。多少、自分はこんなところで何をしているのだろう、とも思う。が、それ以上に、こうした方々に仕事をいただき、直接・間接に多くの支援をいただいたからこそ、今米国に家族で滞在し勉強できているのだと、本当にありがたく感じる。
3時間ほどがあっという間に過ぎ、席を立つ。奥様に、と、テイクアウトの寿司折まで持たせていただいた。
素晴らしい人たちに恵まれ、私は本当に運が良い、と思った。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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