秋学期の始まりまでいよいよ残り一週間ほどとなり、オリエンテーションが始まった。プログラムの説明、チームビルディングのための野外活動、就職活動の説明などが、数日で行われる。海外学生のためのワークショップ、履修科目の予習のためのPre-term、そしてこのオリエンテーションと、本課程が始まるまでのサポートは上げ膳据え膳の充実ぶりだが、同時にここまでくるとちょっと食傷気味に感じる。とはいえ、今日は実質的な始業式(ほぼすべての学生が最初に登校し、偉い人のスピーチとかがある日、という意味で。ちなみに入学式はない)であり、クラス編成やチーム編成が発表されるとあって、ちょっと楽しみに出かけた(時間を間違えて1時間遅刻したが…)。
偉い人の話は、彼女が副学部長になったばかりで、非常にそれを名誉に感じていて、今日は極度に緊張していた、ということ以外まったく印象に残っていないので、クラス編成についてから書く。スローン校では、一学年370名程度の学生を60数名ずつ6つのクラスに分ける。HBS(一クラス90名程度)などに比べると小規模で、お互いが知り合えるという意味で自分にはちょうど良く感じた。これらのクラス(Cohort)は、海(Ocean)の名前で呼ばれる。つまりAtlantic、Pacificなどで、私はBalticというOceanの所属になった(バルチック海はOceanではなくてSeaだろう、というツッコミは各地で囁かれていたが、中にはCarribianというOceanもあったので、地理的な正しさよりも語呂でつけているのだろう)。さらにこの各Oceanは、6-7名ずつ10個のチームに編成される。Core Teamと呼ばれるこのチームは、最初の学期を通じて、チームプロジェクトをはじめ各種活動の基本単位になる。そしてここでは海に続いて、鳥の名前がチーム名に使われる。鳥は各Oceanに共通しており、10種類の鳥の名前が使われている。中にはPelicanのように、馴染みのある(ぱっと聞いてわかる)名前もあるのだが、半分以上は即座に画像が想起されない鳥で、よって親しみやすさも正直感じない(第一、覚えにくい)。私の所属はGannetという鳥だったが、これまた聞いても?である。辞書を引くと、「カツオドリ」と出た。まったく手がかりにならない。日本人の自分にだけ馴染みが薄いのかと思ったら、7名のチームメンバーのうち4人が知らなかった。早速、チームメイトの一人が買ったばかりのi-phoneを取り出して嬉しそうに、googleで調べたところ、以下のような鳥らしい
・・・まあ、カモメみたいなものか。いずれにせよ、クラスがOceanなので、水辺の鳥にしたかったらしい(それにしても、カモメ(Gull)じゃダメなのか)。ちなみに、「カツオドリ」で画像を調べたら、
・・・全くの別物に見える。まあ、前者の方が見栄えが良いので、そちらが正ということにして、後者は忘れることにする。
それにしても、数字が大好きなMIT(建物名、部屋名(含むトイレ)、学部名、科目名などがすべて数字で表されている)であるにも関わらず、こうした具体名詞をクラスやチームの名前にするのはなぜか。教務担当の女性は、「そのほうが愛着が持てるでしょ」というような説明をしていたが、それならば建物なども同じように普通名詞で名づければ良いし、鳥はもうちょっと万人にわかる種類を選んでほしい。何よりも、要するに愛着はそこでどういう経験・体験をするかで醸成されるべきもので、かわいい名前をつけたからといってそれが育まれるとも思えない。なんとなく、中途半端な虚構の産物に見えてしまう。
虚構といえば、クラスわけが発表された後クラスごとに指定された教室に入り、最初のミーティングが行われたときの有様は、まさにそうした印象を受けた。
・教室入場時はそれぞれハイタッチ、
・世話役の2年生に扇動されてOceanの名前を大声で連呼、
・興奮を示すために机や壁をドンドンと叩く、
たいがいの日本人が「面倒くさいなあ」と感じる大衆扇動である。
誰がこういうことをしたがるのか。日本人だけでなくアジア人全般に抵抗を感じていたように見え、それは驚かなかったが、驚いたのは米国人のなかにも面倒くさそうにやっていたりする連中が少なからずいたことである。それほどまで国際的に面倒くさがられるのなら、この企画は学生の満足度を下げているだけではないか、と思ったりもした。
食わず嫌いはやめよう、というのが留学時に掲げた自戒の一つなので、こういう文化的体質からも目を背けずに付き合っていこうと思うが、どうなることやら…。少なくとも、いわゆる外資系の会社で数年を過ごしたお陰で、その前の自分に比べれば、耐性がついていたことは間違いなさそうである。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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