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「 Macro Economics 2 ...もうどうにも止まらない日本 」
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08年の春学期も、あっという間に前半戦が終わろうとしている。
春学期は1週間の春休みを挟んで前期と後期に分かれており、通期の授業のほかに、前期だけ、後期だけ、という講座も存在する。そして、前期だけの講座は、今週が最終講義となる。週3回の授業を正味5週間分ほどやっているので、講義回数は15回ほどあるのだが、それでも感覚的には実にあっけないものだ。

さまざまな物議を醸した「ぷっつん教授」Roberto Rigobonのマクロ経済学も、今日が最終講義である。
そして、その最後の講義の題材は、日本経済。
経済成長から不況への転落、高齢化など、日本が置かれた経済状況は、近い将来の米国の姿を現している、という認識とともに、バブル崩壊後の日本経済の構造的な問題を分析し、マクロ的視点から何をすべきかを考える、というものである。
最後だけあって、例の傍若無人なジョークも絶好調で、授業は問題発言の連続。
しかし、彼がシミュレーション化してみせた日本経済の負のスパイラルは、極めてダイナミックでわかりやすかった。
彼によると、日本経済の過去17年ほどの不況は、経済の周期的現象でありながらも、かつての米国の大恐慌とかわらないような、構造的深刻性を抱えているようである。
以下、彼のモデルに沿って、複雑に絡み合う不況のスパイラルをいくつかに分解して示す。

①消費減少 ⇒ 在庫増加 ⇒ 価格低下 ⇒ 消費減少
②消費減少 ⇒ 在庫増加 ⇒ 価格低下 ⇒ 企業収益減少 ⇒ 不良債権増加 ⇒ 銀行健全性悪化 ⇒ 市場の流動性減少 ⇒ 消費減少
③消費減少 ~ 市場の流動性減少 ⇒ 投資減少 ⇒ 生産減少 ⇒ 賃金カット、早期退職増加、失業率上昇 ⇒ 所得減少 ⇒ 消費減少
④所得減少、企業収益減少 ⇒ 資産(特に不動産)売却 ⇒ 資産価値低下 ⇒ (担保価値低下による)不良債権拡大 ⇒ 銀行健全性悪化 ⇒ 市場の流動性減少 ⇒ 消費減少
⑤所得減少、企業収益減少 ⇒ 税収減少 ⇒ 財政赤字拡大

こうした何重にも重なった負の再生産構造に、日本経済は陥っている。
これに対し、日本政府は、考えられるだけのマクロ的政策を講じてきた。
・消費拡大のための財政出動、金利引き下げ、減税
・投資拡大のための減税、規制緩和
・生産拡大のための為替介入
しかし、どれも成果をあげるに至らず、17年の歳月が過ぎている。
Rigobonによると、これを解決するには方法は一つしかない。
インフレ誘導による消費の浮揚である。
そのためには、財政赤字の拡大には目を瞑れ、という。
本当に独立した中央銀行なら、インフレ率のみが関心事であり、財政赤字がどれだけあろうが無関係なので、これができるはずだ、という。
逆に言えば、それだけ強いコミットメントと透明性をもった、はっきりとモノがいえる日銀総裁が必要だ、という主張だ。

翻って、日本では、日銀総裁人事で政治が空転している。
自民党が推し、民主党が反対する武藤氏は、確かインフレターゲット論者である。
その意味では、Rigobonの主張を実現しうる人物かもしれない。
しかしながら、財務省出身者である。財務省出身者が、「財政赤字?俺の知ったことか」と言い切れるだろうか。
あるいは武藤氏でなかったとしたら、小泉総理的な、過激な日銀総裁が出てくる人材的土壌が、日本にはまだあるのだろうか。
Rigobonは、「俺ならいつでもやってやるよ」と吠えていたが・・・。

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世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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