「 End of 1st half of 09 spring semester …7/8修了 」
2年生最終学期も前半が修了(終了?)した。
これで2年間のMBA課程も、7/8が終わったことになる。
米国での生活があと数ヶ月で終わるのだと思うと、非常に惜しいというか寂しい気持ちになるが、学生生活自体は、2年でちょうどよかったかな、と思う。今はどちらかというと、ここで学んだこと(授業で学んだ考え方や視点、テクニックだけでなく、人との接し方、コミュニケーションの仕方、価値観など)が社会でどれだけ通用するか、自分の社会との関わり方を変えるかを、みてみたいという気持ちが強い。そのステージとして、米国でやってみたい気持ちは強いのだが、未曾有の不況下にある日本で私の復帰に期待してくれている方々がいる以上、戻らざるを得まい。
というわけで、恒例であるが、この春学期前半に履修した授業の総括をしておきたい。
Global Economic Challenges
担当教官:Kristin Forbes
この期間中最も面白かった授業。
教えるForbes教授は、1998年にMITで経済学博士号を取得した後、世界銀行、米国財務省などを経て、2003年に当時のブッシュ政権下でホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)メンバーに史上最年少で抜擢された人物。年齢的には39-40歳くらいか。気取ったところがなく、女子学生のように笑いながら延々と話し続けるのだが、数字にはめっぽう強く、話も(よくしゃべるとはいえ)決して冗長ではなく、論旨が明快でそれを支える論理もしっかりしている。また学生の質問に対して、多くは的確な実例を引用しつつ明快に答えるのだが、わからないことははっきりとわからないという点にも好感をもった。よほど健全な自信がないと、ああいう態度は取れない。
授業の内容は、メキシコやアジアなどの経済危機の歴史とその構造分析、それを踏まえた現在の米国の金融危機の分析、新興工業国の分析、世界の所得格差についての考察など、マクロ経済的視点から世界の大きな時事問題について一話簡潔的に論じていくというもの。マクロ経済学の分析モデルを用いつつ、経常収支、失業率、インフレ率、為替などのマクロ経済指標からその国の経済の健全度・脆弱度や必要な経済政策を分析する力を養う。普段なかなか一国の経済指標をじっくりと分析・比較することがないので、改めてやってみると非常に興味深い。また教授自身の自論を示しつつも、学界や政界の異なる見方も紹介してくれるので、バランスが良い。
現在妊娠中であり、夏ごろに出産予定ということで、そのためもあって今年は半期の講座になったそうだが、是非通期で学んでみたい講座である。
Intro to System Dynamics
担当教官:Damon Centola
System Dynamics とは、1950年代にMITで考え出された理論・分析アプローチである。社会現象の作用・反作用を複合的に捉えることで、中長期的な経済現象・社会現象の変化をシミュレーションし、問題解決に結びつけようとするもので、なかなかやってみないと上手くは説明できないのだが、非常に新しい物事の見方を教えてくれる。多くの同級生が既に履修していて、皆大変だが面白いと異口同音に言うので、私も今回チャレンジしてみた。
やってみると、確かにまったく新しいものの考え方を求められ、かつ世の中の変化について非常に論理的・構造的かつ多角的な理解を与えることができる。イースター島の人口があるとき急増して一気に激減したのはなぜか、猛威を振るった台湾のSARSの感染がある時点から広がらなくなりやがて減退したのはなぜか、カリフォルニアの山火事が当局の必死の消化・防止活動にも関わらず巨大化しつづけるのはなぜか、などの問題を、講座の名前の通り、社会・経済システムのダイナミズムとして、糸を解きほぐすように分析してゆく。非常に知的で面白い作業である。宿題が大変なのだが、勉強したという気になってよい。
唯一残念だったのは担当教官。いかなる講義を含めて教室でモノを教えるのはこれが初めてなのだそうで、はっきり言ってぎこちない。教える情熱もあまり伝わってこない。まあ仕方ないが…。
Supply Chain Planning
担当教官:D.Simchi-Levi/ S.Graves
先学期に四苦八苦したLogistics Systemという講座の応用版という位置づけで履修した授業。MITのDepartment of Civil and Environmental Engineeringの教授であるSimchi-Leviが教え、授業も有名なドームのあるメインキャンパスで行われるというので、また新しい発見がいろいろとありそうだと期待して履修したが、Logistics Systemで得たものに比べると、新しい知識の獲得度合いは低かったように思う。いくつかの応用理論の講義と、ケーススタディを通じた実践の組み合わせであり、ひたすら講義が行われたLogistics Systemに比べると、新しいテクニックに出会うことが少ないのは構造的に仕方ないような気もするが、それを差し引いても少し手ごたえが足りなかったかもしれない。もっとも、ケースで扱った問題は比較的面白いものが多く、先学期の復習的な意味も含めて、それなりに勉強にはなった。シンガポールにある提携大学と通信回線で繋いで授業を行う関係上、開始が朝8時と早く、その「コスト」を払って参加しているために、どうしても授業に対する要求レベルが高くなってしまったのかもしれない。
教授はというと、Simchi-Levi教授はまだ良いのだが、大半を教えるStephen Graves教授があまり講義上手ではなく、授業が盛り上がらず、というかむしろ混乱したりすることもあった。何せ彼が発する学生への問いかけに対して、誰も何を問うているのかわからなかったりするのだから、辛い。内容は良いのだが教えるのが下手、というのは、MITのOperation系の授業に共通した課題のように思われる。
International Supply Chain Management
担当教官:A.Weiss/ H.Marcus
この期間中、最も期待ハズレだった授業。
はっきり言って、オススメしない。
担当のMarcus教授自身が最初の授業で語っていたように、Operation系の授業ではInternationalというキーワードを冠する唯一の授業であり、先学期に履修したLogistics Systemでは逆に「ここでは米国内のロジスティクスをベースに議論を進める」と説明されていたので、これまで十分私がカバーできていなかった分析の視点やテクニックが得られるものと期待していたが、何のことはない。分析といえば、要するに、国内で完結するサプライチェーンに比べて、国際的なサプライチェーンの場合は、生産コストが安い一方で回転期間が長くなって在庫コストが高くなるので、そのバランスを最適化しなければならない、というだけの話で、極めて当たり前。それ以外の定性的な要検討ポイントも、ポイントとしては面白いものもあるのだが、何を重視してどの程度定量分析の答えに修正を加えるべきかについて、答えを出すための具体的な考え方や、有益な示唆を得ることができなかった。
Power & Negotiation
担当教官:Jared Curhan
この春学期に履修している、唯一の通期授業(つまり他の授業は春学期の前半だけで修了する)。
担当のCurhan教授が上手いこともあり、非常に面白く、学びも多い。
毎週、新しく学んだ交渉(Negotiation)のテクニックや視点を活かして、実際に与えられた課題について決められた相手と交渉を行い、それを授業で振り返って、更に交渉術を深めていく、というようなかたちで進められる。
教授は、交渉術はかなりの部分において後天的に獲得可能であるという大前提のもと、心理学の専門家らしく交渉術を要素分解して論理的に解説してくれる。一回3時間の講義なのだが、まったく長いと感じさせられないほど、名調子で授業が進んでいく。
後半が楽しみである。
これで2年間のMBA課程も、7/8が終わったことになる。
米国での生活があと数ヶ月で終わるのだと思うと、非常に惜しいというか寂しい気持ちになるが、学生生活自体は、2年でちょうどよかったかな、と思う。今はどちらかというと、ここで学んだこと(授業で学んだ考え方や視点、テクニックだけでなく、人との接し方、コミュニケーションの仕方、価値観など)が社会でどれだけ通用するか、自分の社会との関わり方を変えるかを、みてみたいという気持ちが強い。そのステージとして、米国でやってみたい気持ちは強いのだが、未曾有の不況下にある日本で私の復帰に期待してくれている方々がいる以上、戻らざるを得まい。
というわけで、恒例であるが、この春学期前半に履修した授業の総括をしておきたい。
Global Economic Challenges
担当教官:Kristin Forbes
この期間中最も面白かった授業。
教えるForbes教授は、1998年にMITで経済学博士号を取得した後、世界銀行、米国財務省などを経て、2003年に当時のブッシュ政権下でホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)メンバーに史上最年少で抜擢された人物。年齢的には39-40歳くらいか。気取ったところがなく、女子学生のように笑いながら延々と話し続けるのだが、数字にはめっぽう強く、話も(よくしゃべるとはいえ)決して冗長ではなく、論旨が明快でそれを支える論理もしっかりしている。また学生の質問に対して、多くは的確な実例を引用しつつ明快に答えるのだが、わからないことははっきりとわからないという点にも好感をもった。よほど健全な自信がないと、ああいう態度は取れない。
授業の内容は、メキシコやアジアなどの経済危機の歴史とその構造分析、それを踏まえた現在の米国の金融危機の分析、新興工業国の分析、世界の所得格差についての考察など、マクロ経済的視点から世界の大きな時事問題について一話簡潔的に論じていくというもの。マクロ経済学の分析モデルを用いつつ、経常収支、失業率、インフレ率、為替などのマクロ経済指標からその国の経済の健全度・脆弱度や必要な経済政策を分析する力を養う。普段なかなか一国の経済指標をじっくりと分析・比較することがないので、改めてやってみると非常に興味深い。また教授自身の自論を示しつつも、学界や政界の異なる見方も紹介してくれるので、バランスが良い。
現在妊娠中であり、夏ごろに出産予定ということで、そのためもあって今年は半期の講座になったそうだが、是非通期で学んでみたい講座である。
Intro to System Dynamics
担当教官:Damon Centola
System Dynamics とは、1950年代にMITで考え出された理論・分析アプローチである。社会現象の作用・反作用を複合的に捉えることで、中長期的な経済現象・社会現象の変化をシミュレーションし、問題解決に結びつけようとするもので、なかなかやってみないと上手くは説明できないのだが、非常に新しい物事の見方を教えてくれる。多くの同級生が既に履修していて、皆大変だが面白いと異口同音に言うので、私も今回チャレンジしてみた。
やってみると、確かにまったく新しいものの考え方を求められ、かつ世の中の変化について非常に論理的・構造的かつ多角的な理解を与えることができる。イースター島の人口があるとき急増して一気に激減したのはなぜか、猛威を振るった台湾のSARSの感染がある時点から広がらなくなりやがて減退したのはなぜか、カリフォルニアの山火事が当局の必死の消化・防止活動にも関わらず巨大化しつづけるのはなぜか、などの問題を、講座の名前の通り、社会・経済システムのダイナミズムとして、糸を解きほぐすように分析してゆく。非常に知的で面白い作業である。宿題が大変なのだが、勉強したという気になってよい。
唯一残念だったのは担当教官。いかなる講義を含めて教室でモノを教えるのはこれが初めてなのだそうで、はっきり言ってぎこちない。教える情熱もあまり伝わってこない。まあ仕方ないが…。
Supply Chain Planning
担当教官:D.Simchi-Levi/ S.Graves
先学期に四苦八苦したLogistics Systemという講座の応用版という位置づけで履修した授業。MITのDepartment of Civil and Environmental Engineeringの教授であるSimchi-Leviが教え、授業も有名なドームのあるメインキャンパスで行われるというので、また新しい発見がいろいろとありそうだと期待して履修したが、Logistics Systemで得たものに比べると、新しい知識の獲得度合いは低かったように思う。いくつかの応用理論の講義と、ケーススタディを通じた実践の組み合わせであり、ひたすら講義が行われたLogistics Systemに比べると、新しいテクニックに出会うことが少ないのは構造的に仕方ないような気もするが、それを差し引いても少し手ごたえが足りなかったかもしれない。もっとも、ケースで扱った問題は比較的面白いものが多く、先学期の復習的な意味も含めて、それなりに勉強にはなった。シンガポールにある提携大学と通信回線で繋いで授業を行う関係上、開始が朝8時と早く、その「コスト」を払って参加しているために、どうしても授業に対する要求レベルが高くなってしまったのかもしれない。
教授はというと、Simchi-Levi教授はまだ良いのだが、大半を教えるStephen Graves教授があまり講義上手ではなく、授業が盛り上がらず、というかむしろ混乱したりすることもあった。何せ彼が発する学生への問いかけに対して、誰も何を問うているのかわからなかったりするのだから、辛い。内容は良いのだが教えるのが下手、というのは、MITのOperation系の授業に共通した課題のように思われる。
International Supply Chain Management
担当教官:A.Weiss/ H.Marcus
この期間中、最も期待ハズレだった授業。
はっきり言って、オススメしない。
担当のMarcus教授自身が最初の授業で語っていたように、Operation系の授業ではInternationalというキーワードを冠する唯一の授業であり、先学期に履修したLogistics Systemでは逆に「ここでは米国内のロジスティクスをベースに議論を進める」と説明されていたので、これまで十分私がカバーできていなかった分析の視点やテクニックが得られるものと期待していたが、何のことはない。分析といえば、要するに、国内で完結するサプライチェーンに比べて、国際的なサプライチェーンの場合は、生産コストが安い一方で回転期間が長くなって在庫コストが高くなるので、そのバランスを最適化しなければならない、というだけの話で、極めて当たり前。それ以外の定性的な要検討ポイントも、ポイントとしては面白いものもあるのだが、何を重視してどの程度定量分析の答えに修正を加えるべきかについて、答えを出すための具体的な考え方や、有益な示唆を得ることができなかった。
Power & Negotiation
担当教官:Jared Curhan
この春学期に履修している、唯一の通期授業(つまり他の授業は春学期の前半だけで修了する)。
担当のCurhan教授が上手いこともあり、非常に面白く、学びも多い。
毎週、新しく学んだ交渉(Negotiation)のテクニックや視点を活かして、実際に与えられた課題について決められた相手と交渉を行い、それを授業で振り返って、更に交渉術を深めていく、というようなかたちで進められる。
教授は、交渉術はかなりの部分において後天的に獲得可能であるという大前提のもと、心理学の専門家らしく交渉術を要素分解して論理的に解説してくれる。一回3時間の講義なのだが、まったく長いと感じさせられないほど、名調子で授業が進んでいく。
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MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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