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在る偏屈者による半年遅れのMBA留学日記、そして帰国後に思うこと
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先週から、セーリングを習い始めた。

ボストン市とケンブリッジ市を隔てるチャールズ川の沿岸には、多くのマリーナ、ボートハウスが設けられている。MIT、ハーバード大、ボストン大(BU)といった大学の施設のほかに、市営のマリーナもある。そうした中でも、MITのセーリング基地は、最も古い施設のひとつであり、また最もビジターに開放された施設でもある。ハーバード大やBUのセーリング基地では、大学のセーリングチームに所属している人でないとヨットに触ることができないのに対して、1930年代に設けられたMITのセーリング基地では、MIT関係者であれば誰でもヨットを借りてセーリングを楽しむことが出来る。また初心者向けには、毎週水曜日の夕方に無料の講習があり、3回コースで、ヨットの仕組みから用語、用意の仕方、操縦の仕方、片付け方など、一通りのことを教えてくれる。私は限りなくカナヅチに近いので、この手のスポーツは敬遠していたが、友人の後押しもあり、折角なので卒業までにやっておこう、と先週から講習会に参加している。

そんなわけで、今日は友人のAR君とセーリングの練習。デッキにあげられたヨットに帆を張り、チャールズ川に押し出し、舵を取り付けて、川に滑り出してゆく。今日はそれほど風が強くなかったので、恐らく比較的初心者向けの環境だったのだろうと思うが、それでもなかなかに難しい。風を読み、その力を受けられるように帆の向きと強さをコントロールして、かつ行きたいところを目指さなければならないので、大忙しである。二人で乗り込んだ場合、一人が帆を、もう一人が舵を操るのだが、二人の呼吸が合わないと、ヨットが推進力を失って止まってしまったり、右往左往したり、果ては転覆しそうになったりする。そもそも動力源を自然に頼っていて、その自然は目まぐるしく変化するので、なかなか人間の思い通りにはなってくれない。河岸から見ていると穏やかそのもののチャールズ川だが、ボストンのビル街や橋の橋梁を吹き抜けて変化した風は、川の場所場所によって全く違う角度と強さで吹いている。そのため、旋回する場所を間違えると、思いがけない横風を喰らって倒れそうになったり、逆に風が凪いで身動きできなくなったりしてしまう。私は人よりそういう傾向が多少強いかもしれないが、とかく人間は、過去の出来事から未来の出来事を予測しようとする。それがセーリングでは、上手く機能しない。過去ではなく、これから進もうとする水域の波の動きや、その近辺のヨットの動きを見なければならないのだが、なかなか頭がそういう風に働かないのと、技術的未熟さから、要するに余裕がない。特に、泳ぎに自信がないため、転覆に対する恐怖が人一倍強く、要するにビビっているので、余裕なんかないのである。

ただ、上級者が滑るようにヨットを操縦している姿は、本当に美しい。自然を味方につけているようで、他の乗り物にはない美しさがある。あれは是非、一瞬でも良いので、体験してみたいと思う。
そんなわけで、毎週やってみようと思う。
卒業までに、多少モノになるかどうか・・・。


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先ほどの記事に補足するが、会社を大きくするためには、大きく分けて3つの方法があると思う。
①もっとやる
②より上手くやる
③やることそのものを変える

①は、文字通り、もっと一生懸命働く、ということである。
1日4時間しか働いていなかったなら、8時間働けば、売上は倍になるかもしれない。
一日5分考えるのよりは、一日50分考えた方が、良い結果が出るかもしれない。

②は、効率の問題である。
1日8時間働いていても、その中で8個しか製品を作れなかった人を、16個作れるようにする。
1日8時間で2回しか顧客を訪問していなかった営業マンを、4回訪問できるようにする。
そういった類の打ち手である。

そして③は、所謂イノベーション、あるいは事業変革である。
今まで中古車専門でやっていた店で新車も扱うようにするとか、
それまで自社でやっていた生産を海外のベンダーに外注するとか、そういうやつである。

当然、①の方がやさしく、③の方が難しい。
また効果が出るのも、①は比較的早く、③は時間を要する
コンサルタントとして顧客の会社に入ってゆくと、多くの場合、①で結構良いところまで改善することに気づかされる。ただ逆に、じっくりと③に取り掛かれる機会というのもあまりない。
そして、今回のSloanGearの売上拡大が何によって成し遂げられたかというと、やはり①が大きかったように思う。もちろん、色々な業務を見直したり、コミュニケーションを改善したり、②っぽいことも少なからずやったが、それでも増収の多くは、平たく言えば前年度よりマジメにやったことの成果だと思う。

そういう意味でも、私は何も難しいことをしていないと、改めて思う。
そしていつの日にか、②や③が求められる状況に来たときに、どれだけ対応できるかが、次のチャレンジになるだろう。



いよいよ、名実ともにSloanGear CEOとしての最終日を迎えた。
本日をもって、新チームから買収金額の払い込みを終え、会社譲渡の合意文書にサインをした。
以前にも書いたように、ちょっと寂しいような気もしたが、チームメンバーをみると清々した顔つきのようにも見え、まあ一件落着かな、と思う。
結局利益では昨年度に1%程度及ばなかったが、売上では昨年度を12%ほど上回った。利益を損ねては意味がないのだが、売上だけでいうと、去年の4月に(テキトーに)作った事業計画の目標値を僅かながら上回ったことになる。会社を引き継いだ段階では予想もしていなかったような未曾有の不況の中では、まあ良くやった方ではないか、と自画自賛してみる。

振り返ってみると、やっておいて良かったと思うこと、これをやっておけば良かったと思うこと、いろいろな反省がある。

やっておいて良かったこととしては、例えば
  • 常に1-2ヶ月先を考えること。少なくともチームの誰よりも先を考えていること
  • 毎週全員参加のミーティングをやること
  • 数字(売上、在庫、利益率など)は自分でみること
  • 基本的には細かい管理をせず、任せること。但し問題が発生した場合は、自分で手を動かして処理できるレベルまで掘り下げること
  • 常に悲観的に考え、「プランB」を用意すること。但しそれは必ずしも皆に見せないこと

逆に、やっておけば良かったと思うことは、多々あるのだが、例えば
  • もっと一人ひとりのメンバーと話す機会を設ける
  • モノの流れと同じかそれ以上に、カネの流れを考え、管理する
  • 他人に売る商品は、注文する前にまず自分が目で見て、手で触ってみること
  • 人に頼りすぎない・期待しすぎないこと
といったところか(何か書いてみると至極当たり前にみえるが、そんなものなのかもしれない)。

ともあれ、Class of 2009マネジメントチームの皆さん、これまでありがとう。お疲れ様でした。
そしてClass of 2010マネジメントチームの皆さん、頑張って!!

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 4月から、CEO Perspective(CEOの考え方)という授業をとっている。
毎回米国の会社のCEO(もしくはそれに準ずる立場の人)がゲストとして招かれ、彼・彼女が実際に乗り切った 困難な一局面を例に取りながら、CEOがどういう物の考え方で会社を経営すべきかを語る、という授業である。ファイナンスやオペレーションの授業のように、具体的な個別スキルを学べるわけではもちろんないが、その立場に立ってみないと分からない困難や視点、考え方を追体験できることができるので、非常に面白い。

第8回目の今日は、Ron Fisherという人物が招かれた。
ソフトバンクの米国法人Softbank Holdings及びSoftbank Capitalの代表を務める人物で、ソフトバンク本体の取締役も兼ねている。ソフトバンクの外国人取締役というと、一時期話題になったアリババ・ドットコムの馬社長も顔を連ねているが、Fisher氏がソフトバンクに参画したのは10年以上前の1995年、取締役になったのは1997年で、ソフトバンクが東証一部に上場するより前の話である。どんな人物なのか、非常に興味をもっていたが、教室に現れたのは小柄な白髪紳士だった。なぜソフトバンクに参画したのか、どのようにして孫氏とであったのか、そのあたりの経緯は授業の本旨ではないこともあって多く語られなかったが、彼の投資哲学を聞いていると、なぜ日本の会社で取締役を10年以上務め、なぜ孫氏が彼をそばに置きたかったかが、何となくわかるような気がした。

まず、彼の投資スタイルのベースには、所謂アングロ・サクソン型の合理主義が貫かれている。例えば、
  • 新しい投資機会は、既存の投資案件より往々にして魅力的に見える。新しい案件に投資することが自己目的化してはいけない。
  • 投資先の会社が困難に陥ったとき、存続させるべきか倒産させるか、あるいは売り払うか、その判断においては情に流されず、今仮にその会社に投資していなかったとして、今から新規にその会社に投資しようと思うか、で決めるべき。過去に注ぎ込んだカネ、努力、時間、そこから醸成された思い入れなどは、難しいがすべて捨てなければならない
  • 戦略投資と純投資は峻別しなければならない。例えばSoftbank Capitalの場合、ソフトバンク・グループの既存事業とのシナジーなどを当て込んで投資することはしない。またソフトバンク本社はSoftbank Capitalの一出資者に過ぎず、ファンドの運営にクチを出すことはできないようになっている

一方で、どこか日本的というか、定性的かつ長期的な視点も併せもっているようであった。例えば、
  • 会社が危機を取り超えられるかどうかは、CEOが本当にコミットしているか、に大きく左右される。知的財産とか技術力とか、そういったものはすぐ陳腐化するが、トップの能力、考え方、気持ちが困難を乗り切るに足るものであれば、生き残れる
  • 小手先の投資戦術を考えるのではなく、現在の社会・経済環境にとって、その会社の製品・サービスが本質的に必要とされているか、これから先も必要とされ続けるか、を考えるべき

日本を代表するベンチャー企業として国内外での事業拡大を考えるにあたって、このような明確な視点と洞察力をもった人物が同じチームにいてくれたら、確かに大きな助けになっただろう。

そこでふと、MBA課程を通じて親しくなった友人たちを思い浮かべてみると、自分にとって将来こういう存在になってくれる可能性のある顔ぶれがいることに気がついた(先方がどう思っているかは別にして)。実際に彼らとの関係が今度どうなるかは全く分からないが、留学で得た大きな財産の一つである。

Paintballというので遊んできた。

グループに分かれて空気銃で打ち合う戦争ゴッコのような遊びで、米国では競技団体もいくつかある、それなりに市民権を得た「スポーツ」のようである。具体的にどんなことをするのかは、会の主催者の一人である同級生のブログに詳しいので、そちらに譲るが、色々な意味で面白い経験だった。

まず、空気銃とはいえ、分別のつく大人になって、生身の人間を銃で撃つ、というのは、あまりない(というか個人的には全然ない)経験であり、妙な感じだった。競技なので、誰かを撃って当たると楽しいし、誰かに打たれると悔しい。が、考えてみると、誰か個人に飛び道具を当ててやっつける団体競技というのは、他にない気がする。

また、当たると結構痛い。特に至近距離でやられると、くっきりとアザができる。それを知っているのに、一生懸命相手に弾を当てて、それがちょっと嬉しかったりするのだから、かなり精神的にはヘンなゲームである。

そして何より、ふと、これが本当の戦場だったら、と思うと、結構ゾッとする。映画やテレビゲームでみるように戦場の全体像は見通せず、敵がどこに何人いるのか、なかなか把握できない。気を抜くと思わぬ方向から弾が飛んできて、簡単に足を打ちぬかれる。味方同士のコミュニケーションも取り難く、援護を頼んで前進すると、間違って後ろから撃たれたりする。塹壕に隠れていても、じりじりとした蒸し暑さや視界の悪さ、緊張感、不安などで、じっとしていること自体がかなりの忍耐力と持久力を要する。実際の戦場には、これに死の恐怖が加わるわけである。気がおかしくなる兵士が時々現れるのも無理はない、と思った。

我々現代の日本人は、よく言われるように平和ボケしているのかもしれない。お隣の韓国のように徴兵制をしいて軍事訓練を施せば、若者はもうちょっとピリっとするのかもしれない。それでも、戦場の恐怖は、そうした教育目的で体験するにはあまりにも辛く、非人間的なものなのではないか。

腕に出来た複数のアザを気にするとともに、普段はあまり気にしないそんな反戦思想的な思いに囚われた一日であった。




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WEATHER@MIT
PROFILE
HN:
Shintaro
性別:
男性
職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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