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「 Louis Gerstner ...経営者を目指す若者へのメッセージ 」
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Dean's Innovative Leader Seriesのゲストとして、Lous Garstnerが来校した。
言わずと知れた、IBMの元CEOである。1965年にハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得しマッキンゼーに入社、アメリカン・エキスプレスやRJRナビスコで経営者として実績を積んだ後、1993年から10年間IBMを率い、同社をメーカーからサービス中心の会社への転換などを柱に復活させた。現在は、カーライル・グループの会長におさまっている。米国を代表するカリスマ経営者の一人、と言ってもほとんど反論はないだろう。
Deanに先導されて校舎に入ってきた彼は、噂どおりの小柄な体格で、街角ですれ違っても気がつかないかもしれない。
しかし、一旦ステージで口を開くと、66歳の全身から強い意思と自信が迸り、それが言葉に乗って刺さってきた。講演内容は、限られた公演時間(45分)でもあり、言っていること自体はそれほど新味に富んだものでもない。やはりこれは、あの人物からライブで発散されてこそ説得力と価値をもつメッセージである。
と、Disclaimerを掲げた上で、以下に彼の話の要旨をまとめておく。

  • マネジメントに求められるものとリーダーに求められるものは違う
  • マネジメントとしてのスキルは、継続的に研鑽されなければならない。自転車に乗ろうとかつて練習していた人の中で、今でも練習している人はいないだろう。マネジメントはそういうものではない。若くしてマネジメントの地位に就いた人の中には、それがゴールだと勘違いする連中も多い。贅沢な個室、コーヒーをいれてくれる秘書、周囲の視線、そうしたものが、その勘違いを助長する。自分もコンサルタントからいよいよ自分の城を手にいれたときには、そういう気持ちになりかけた。でもそれでは成功しない。不断の研鑽を続けなければ成らない。そのうえで、以下の3点に特に留意して、任務にあたらなければならない。
    • 顧客の本当の声をきくこと
      • 顧客について、顧客のニーズについて自分たちが何を知っているかをまず掴まなければならない。
      • そのうえで、本当の顧客の声を聞きに行かなければならない。IBMのCEOになって、まず徹底的な顧客満足度調査をやらせた。その結果報告された内容は「顧客はみな当社製品に非常に満足しています」というものだった。そんなはずはないのだ。市場シェアはどんどん下がっていた。すぐに調査をやめさせて、自分で顧客を回って、声をきいていった。耳に心地よい情報を鵜呑みにしてはいけない。顧客の本当の声を知らずに、経営など出来ない。
    • 賞罰
      • 人を動かすものはいろいろある。しかし最も多くの人が、最も高い確率で反応するのは何か。Moneyだ。だから、会社が、どういう連中に、どういう方法で給与・賞与を支払っているのか、しっかり理解して、関与しなければならない。
    • 時間管理
      • 組織を率いていく中で、何にどれだけ時間を使うか。多くの人は、無駄なおしゃべりに途方もない時間を費やしている。人はそれを「会議」と呼ぶ。私にとって会議とは、事実の解釈の仕方や、それに対する対応を議論する場だ。事実そのものの報告はいらない。私がやってきたころのIBMは、実に会議の多い会社だったが、その会議の8割程度は事実の報告だった。私はこれらの事実を、会議の前にすべてファックスで提出させることにした。事実は、自分で読んで理解すればいい。
      • 部下の仕事のどのタイミングで、自分が時間を使ってそれに関与するか、というのも極めて重要である。部下に仕事の指示を出したら、なるべく早い時期に検討に関与して、確かな方向に向けてやらねばならない。プロジェクトの進行を横軸にとって、マネジメントとして最も重要な意思決定に関与できる機会を縦軸にとると、グラフは左上から始まり、時間が経つにつれて急激に低下し、やがて低空飛行状態になる。プロジェクトの半ばを過ぎて報告を聞いても、すでにこの低空飛行状態に突入しており、結果を大きく左右するような意思決定はできない。マネジメントはプロジェクトが初期の段階にこそ関与し、皆が正しい問題を捉えているか、適切なアプローチで動こうとしているか、資源は十分かを見極めなければならない。マネジメントとは、部下を指名して、あとで報告させるだけのプロセスではない。
  • 一方、リーダーとは、情熱であり、人物である。
    • リーダーは、エキサイティングで、可能性を信じ、勝ちに行く人物でなければならない。またそうした文化、空気を創り出す人でなければならない。
    • 自分で成功を演出したり、他人からの評価を高めるような小細工をしてはならない。かつて自分の部下で、仕事を任せると、「それはかなり難しいです。大きなリスクがあります。もちろん、言われたからには何とかやってみますが・・・」と必ず防御線をはり、仕事を成し遂げたら「困難な任務でしたが、何とか成功できました」と大勢にメールを送るヤツがいた。そういうのは無駄だ。誰かに評価されたいからやっているだけで、評価者が誰もいなかったらそんなパフォーマンスはしないだろう。
    • 途中で情報を遮断する者も、組織の中のリーダーとしては適任ではない。これもかつての部下で、非常に優秀なのだが、私が従業員に向けて発したメッセージを部下に伝えていない幹部がいた。なぜ伝えないのか、と聞くと、「彼らは聞かないほうがいいと思いました」という。「それは私が判断するので、従業員向けのメッセージは全員に流して欲しい」と伝えたら、わかりました、といったものの、やはり状況はかわらなかった。私は彼を解雇した。
    • 部下とどう接するかというのも非常に重要だ。部下を睨みつけるばかりでは、みな着いてこない。アメリカン・エキスプレスの社長になったばかりのころ、私はエレベーターの中ででも、神経質な表情を崩さなかった。すると皆それを恐れて、同じエレベーターに乗らなくなってしまった。それでは人はついてこない。
  • 皆、今もっている能力を最初からもって生まれたわけではない。これまで努力して、皆が磨き上げてきたものだ。スポーツでも音楽でも、よいパフォーマンスをしようと思えば、練習するだろう。マネジメントも同じだ。練習しなければならない。そのために、自分が今どうしているかを常に客観的に振り返らなければならない。そして、自分の不足を認識し、謙虚に助けを求めなければならない。定期的に、アドバイスを求め、そして他人にもアドバイスをしてやらなければならない。そうすることで、マネジメントとしての、リーダーとしての能力が磨かれていくのだ。

やはりこういう話は、ときどき聞くと気持ちが締まる。
Louさん、ありがとうございました。

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職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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