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「 Farewell lunch with host family …不思議な縁に感謝 」
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ホスト・ファミリーのHLさんご夫婦を、手巻き寿司ランチにご招待した。
HLさんご夫妻については、このブログでも2度ほど書いたが、米国の良き中流階級と表現すべきか、ボストン圏の都心から少し離れた歴史ある住宅地に居を構え、知的・経済的水準の高いゆったりとした生活を送られている、素敵なご夫婦である。MITの紹介で知り合うことができたこのご夫婦とは半年に1回ほどお会いして、そのたびにご主人の日本に対する深い造詣と、米国の生活の物質的・精神的・文化的豊かさに感銘を受けてきた。いよいよ我々がボストンを離れる日が近くなったため、最後くらい狭い我が家にご招待しようということで、この日のランチになった。

幸い天候にも恵まれ、良い魚(特にこの日はサーモンが最高!)も手に入り、決して豊かではない学生用アパートではあるが、食卓の上だけはそれなりに豪華だったように思う。いつもHLさん宅にお伺いした際に遇されるように、我々も最初は「レセプション」としてソファーに腰を下ろし、お茶か食前酒とともに互いの近況を話し合い、頃合を見計らって食卓へ…、という流れでご接待したかったのだが、やはりどうも慣れないもので、動きや会話がぎこちない。HLさん宅に招かれると、「レセプション」で30分程度は過ごすのだが、この日は10分か15分でガマンできなくなり、食卓へどうぞ、となってしまったような気がする。
会話の中心は、ご夫婦の近況、特にご主人が先月仕事で日本にいらっしゃっていたときの話と、小学校教師をされている奥さんが教育視察団のメンバーに選ばれて来月中国に行く話。医療機関が導入するITシステムについてコンサルティングを行っているご主人は、東京と前橋を中心に数週間日本に滞在されたらしいが、東京では時間があれば博物館や美術館を回っていたという。それも、新宿?にある日本刀専門の博物館だとか、東京に住んでいた我々でも知らないようなところにまで足を伸ばされていて、彼の日本への興味にまた驚かされる。博物館といえば、というところから、話は米国内の日本美術展示に移り、ボストン北郊のセーラムにある美術館が話題に上った。明治時代に大森貝塚の発見などで活躍したモース博士が同地の出身で、日本滞在時に収集した美術品などを持ち帰ったのが同美術館の展示の始まりなのだそうだが、かつては浮世絵や陶器、甲冑などの「よくある」日本美術だけでなく、明治期の庶民の様々な生活道具が展示されていたそうで、ご夫婦はそれに大変興味をひかれていた。ところが、現在の館長になって展示方針が変わり、もっと「芸術品らしい」ものを展示しなければならない、ということで、それらの生活道具はすべて倉庫に仕舞われてしまったのだとか。残念に思ったHLさんご夫婦は、その旨を知人である同館の保管係員に伝えると、その係員は大いに同感であるとして、ご夫婦を特別に倉庫の中に招き入れてくれた。そこには、展示されていた以上の種類の生活道具が所狭しと保管されていたが、HLさんが最も驚いたのは、ペリー提督が浦賀に来航した際に将軍から贈られたという螺鈿の箪笥であった。HLさんは必ずしも日本美術に詳しいわけではないものの、歴史をご存知であるが故に、その箪笥の文化的・歴史的重要性はすぐに理解された。そしてその箪笥が人々に展示されることなく倉庫に眠っていることを非常に遺憾に思われたそうだが、現在ですら必ずしも注目されていないその箪笥、ペリーはどうやらそれ以上に無頓着であったらしく、引出しが開けられた形跡がないのだという。それは残念だ、という話が盛り上がり、勢い「開けてみよう」ということになって、係員が開けてみた。すると中からは、いかにも日本人ウケしそうな、こまごまとした無数の装飾品が現れたのだという。お話を聞きながら、自分もその「忘れられた」箪笥を開けてみたような気になり、またそれが今自らが暮らす場所のすぐ近くにあるという事実も重なって、非常な興を感じざるを得なかった。歴史や人の出会いというのは、実に面白いものである。

2時間ほどの滞在で、HLさんご夫婦は拙宅を辞された。短い付き合いではあったが、友人付き合いとは明らかに違う、何か特別な時間を過ごさせていただいたように思う。別れ際は、また一つ留学生活の終わりに近づいたという思いもあり、ちょっと感傷的になった。

お世話になりました。きっと、再会の日が来ることを。


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経営コンサルタント
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旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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