ついに自動車免許の路上検定を受検してきた。
9月にペーパー試験に合格、その後勇んで路上試験にのぞんであえなく撃沈してから、億劫になって放置してあったが、6月からのインターンを前に身分証明が必要なこともあり、ようやくの受験と相成った。
前回の「教訓」を活かし、今回はBrookline Driving Schoolというところが取り仕切っている「楽チン受験コース」を利用。領収証の出ない現金100ドルを支払えば、州の法律で決められている縦列駐車や三点ターンなどもなく、直線と右折二回のお気楽路上研修で合格してしまう、というものである。
早朝7時半に、Blookline高校前に集合!ということで、娘二人をたたき起こして、家族で集合場所に向かう。気温7度、小雨が降り、かなり肌寒い。集合場所についてみると、外国人らしき人を中心に、20名ほどが列をなしていた。要領を得ないまま列に加わると、野球帽をかぶった小太りのオヤジが近寄ってきた。名前を名乗ると、「100ドル持ってきたか?」といきなりである。妻の分と合わせて200ドルを取り出すと、むしりとるようにしてポケットに入れる。怪しさ爆発である。
私が列に加わってからも、更に10名ほどが後ろに続いていた。一人100ドルとすると、これだけで30万円ほどになる。おいしい商売である。
と、思っていると、列の後ろのほうにいた女の子(20歳前後)が、同様に100ドルを要求され「領収書は?」と挑戦的な質問をした。「ここはshopではないので、そういうものはないんだよ」と薄ら笑いを浮かべながらオヤジがこたえると、「じゃあそれはいいけど、この100ドルには何が含まれるの?税金とか、免許の発行手数料とか、全部入ってるんでしょうね!?」と更に追及。オヤジが「このお金はね、今日の試験を受けるためのお金。免許の発行には、自動車登録所に行って、60ドルを更に払ってね」とまともにとりあうと、女の子は「なんですって?全部で160ドルもするの?ふざけるんじゃないわよ!そもそもじゃあ今日の100ドルは何なの?」と激高。
そしてこれを受けたオヤジのコメントは秀逸であった。
「ここはアメ~リカ~、カネを払えばなんでもでき~る~♪」
と歌い始めたのである。
確かに、この100ドルの説明をするには、それが一番いいかもね。
5月1日に会社を引き継いでからわずか1日しか経っていないが、今日はAdMIT Weekendと称して、新たに合格した新入生(およびその候補)の人たちを学校が招待し、もろもろの説明会やイベントなどを行う日で、我々の重要な顧客となるClass of 2010の人たちに露出し、多少なりとも売上を期待することのできる貴重な機会であり、見逃すわけにはいかなかった。
とはいえ当然ながら新規に商品を企画したり発注したりする暇はまったくなく、基本的には前チームから引き継いだ(=簿価で購入した)在庫の中から比較的マシなものを展示して売ることになる。サイズや色展開が不揃いであるが、仕方がない。
校舎のロビーに「特設売り場」を設置し、商品を並べていく。
ちょっと学園祭のようでもあり、「自分たちで買った会社」が初めて物理的に姿を現す瞬間ということもあり、軽い興奮を覚える。
陳列のセンスも、前年度のチームより、多少なりとも良さそうである。
午後3時を過ぎると、「顧客」が姿を見せ始める。
商品の価格が分からない、サイズ別の在庫保有状況がわからない、クレジットカードの切り方がわからない、など、小売商人としての素人っぷりが次々に明らかになるが、皆徐々にペースを掴みながら、売っていく。ポロシャツなど、比較的サイズがバランスよく残っていたアパレル商品がそれなりに売れた。一方で、マグカップや名刺入れなど、非アパレル商品はなかなか売れない。今後の商品戦略を考える必要がありそうである。
結局3時間弱の「出店」で、700ドル近くの売上に終わる。
初戦としては、まあこんなものか、という水準ではあるが、この金額を達成するためにチームメンバーの皆が一緒に動いたことの意義の方が大きいように思えた。
次は6月始めの卒業式にあわせたセールス。それまでにも、カスタムメードを受注したりしつつ、売上をあげていく。
まだ皆の関わり度合いにばらつきがあるが、実際の「事業活動」を進めていく中で、徐々に温まってくるだろう。
Go Team!
恐ろしいことに、前日夜の段階で、まだ価格も売上も、当然ながら利益も固まっていない。
キャッシュフローが見えないので、いくら投資を募ればよいのかもわからない。
我らがリーダーのチリ人は、そんな状況の中、チームのロゴを作ったり、「独創的」なことに時間を使っている。
というわけで、今日は腹を括って早朝から自宅で100Kのシナリオ、レポート作りに専念した。
エクセルで財務諸表のモデルを作って、ビジネスモデルや価格体系、成長スピードのオプションなど、チームメンバーが語る定性的な情報を数字に落としてシミュレーションし、妥当なシナリオを導き出す。久しぶりに、仕事をしているようなモードになり、最近にない集中力で作業ができた。パソコンに向かいながら、赤ん坊をあやしたり、昼飯を食ったりしていたようだが、よく覚えていないほどである。
13時半頃、数字とシナリオが固まったので、同じ寮に住むそのチリ人のリーダーを呼んで説明する。いくつか議論をして変更点を相互に確認し、数字の修正、レポート作成と進め、16時には自分のパートを終えた。あとはリーダーがもう一人のメンバーの原稿も含めて統合、調整し、17時前に提出するだけである。
なんとなく、一仕事終えたような充実感を覚えつつ、1時間ほど学校で別のミーティングに出て帰宅した。
夜、リーダーから、感謝の言葉とともに、提出した提案書のコピーが送られてきていた。
そしてそれを開いて、愕然とした。
レポートの最初に掲げられた1ページ半ほどの要旨に、$マークが一切見当たらないのである。売上、コスト、利益、投資額、市場規模、価格、利益率、成長率、何もない。
こんなビジネスプランがあっていいのか!と頭を抱える。
抑えきれずにリーダーに掛け合うと、「ああ、すまない、君の言うとおりだ。せっかく君が考えてくれた数字を使わなかったのは申し訳ないな」という。
私が言いたかったのは、自分の作業が踏まえられなかったとか、そういう次元の問題ではなく、投資家(100Kの審査員はプロのVenture Capitalist)にみせる提案書に金額が一切ないというのはありえないだろう、というポイントである。
そこをもう一度強調し、「君が投資家で、提案書を受け取ったら、何が一番最初に気になる?いくら儲かるか、とかみたくないか?」と聞いてみた。当然「そのとおりだ」という答えを期待している。
しかし、一瞬の沈黙のあとに返ってきた答えはそうではなかった。
「うーん、僕だったら、その事業は面白そうかどうか、が知りたいなあ」
ハンマーで頭を殴られた気分であった。どちらが正しいとか、そういう次元を超越した、根本的な住む世界の違いを感じた。
もう、何も言うまい。
最後に、私が価格設定に頭を悩ませていたときにリーダーが作ったサービスのデモサイトを掲載しておく。
http://www.gemeni.mobi/home
SloanGearの落札が決まり、本日引継ぎと正式な契約書のサイン、金銭授受のためのミーティングが開かれた。
いざその場に至ってみると、やはりそれなりに感慨深く、緊張感も覚える。
買収といっても、10人のチームで一人40万円ほどの投資額なので、まあたいしたことないといえばそれまでなのだが、公開株を証券会社で買う以外に会社を買う初めての経験であり、ちょっとミーハー心をくすぐられるというか、何か凄いことをしているような気になる。またそれ以上に、今回私の誘いを受けて集まってくれた9人の仲間たちをこれから引っ張っていくという責任感が、多少の圧力として顕在化してきたようでもある。
ただ、ママゴトのような部活動に比べれば格段に学びの多い、面白い活動になるだろうという確信は、まだ変わっていない。
ここに来てなお強くなりつつある、「自分は最終的に人の上に立てる器ではないのではないか」という疑念に屈服する前に、リーダーシップの実践練習をしてみようと思う。いろいろ悩むことは間違いないと思うが、まあ自分のカネが絡んでいると思えば、そして皆が自分の誘いに応じてカネを出してくれたという事実を心にとどめておけば、やっていけると思う。
このブログを読んでいただいている皆様でスローン・ロゴ入りアパレルのご入用の方は、是非お気軽にご一報ください。
先日のサッカー日本代表候補発表で初めて代表候補に選出された寺田周平という川崎フロンターレのディフェンダーがいるが、彼の招集が話題になったのは32歳という「高齢」で初めて代表候補に選ばれたから。
要するに、32歳というのはそれだけオッサンだということである。
二児の父。
自分の両親も、32歳で二児をもうけている。
両親の二人目の子供、つまり私の弟が生まれたとき、私は既に4歳になっていたので、そのときの様子は比較的はっきりと覚えている。父に連れられて、母が弟を出産した病院に向かったとき、(当たり前だが)父は圧倒されるくらい大きかった。あのときの父に、今自分がなっていると思うと、未だに現実感が足りないというか、妙な感じもする。
友人からの祝福のメールが次々と届く。その数、10通以上。
Facebook(SNSサービス。ミクシーのようなもの)が、今日は自分の誕生日であると、皆に通知してくれるらしい。
夕食に、妻がステーキとクラムチャウダーを用意してくれた。
サマー・インターン先の投資会社から頂いたDom Pérignon(ピンクではない)を開けて、乾杯する。
食後には、妻の手作りのケーキにロウソクを立てて、祝福を受けた。
長女は朝から「happy birthday」の歌を口ずさんで「練習」していたが、いざそのときになると、恥ずかしがってなかなか歌わない。本番に弱い子供である。
誕生日プレゼント、というわけではないが、かねてより入札していたSloanGearという会社の買収も今日正式に合意された。32歳を面白くしてくれる要素になりそうである。
これからも、よろしくお願いします。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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sloangear★gmail.com
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