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在る偏屈者による半年遅れのMBA留学日記、そして帰国後に思うこと
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日本人研究者が02年以来6年ぶりにノーベル物理学賞を受賞し、日本では号外が出るなど沸いているらしい。こちらでも、大きなニュースになっている。
日本の学力低下、若者の科学への関心の低下が深刻化している昨今、非常に意義深く、めでたいニュースだと思う。

ところが、日米のメディアのニュース見出しを比較すると、多少混乱する。
朝日新聞: ノーベル物理学賞、素粒子研究の日本人3氏に
Wall Street Journal: Two Japanese, American Win Nobel Prize in Physics

…いったい受賞した日本人は2人なのか3人なのか。
混乱は、受賞者の一人の南部陽一郎シカゴ大名誉教授が日本生まれの米国籍であるために生じるのだが、「日本人」の捉え方が違って面白い。
もっとも、「天下の朝日新聞」には、南部氏が米国籍であることを明記してもらいたいものである(例えば時事通信はそのあたりをきちんと書いている⇒記事はこちら


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Boston Red Soxが今年も熱い。
序盤から昨年のワールドシリーズMVPのマイク・ローウェルが故障で出られなかったり、主砲ラミレスがトレードで抜けたりと、昨年の快進撃を支えた攻撃陣が精細を欠いていたが、ラミレスの代わりに入ったジェイソン・ベイが後半戦大ブレークしたり、「凡打製造機」だったルーゴに代わってショートのレギュラーを掴んだ新人ロウリーが活躍したりで、全体としての攻撃力を維持、それどころかシーズン終盤にかけて向上してきている。
投手陣も、エースのベケットが昨年のような鬼神の働きとは行かず、また昨年の先発ローテーションを支えたシリングが使えないなど、やはり昨年の優勝の立役者がピリッとしないが、松坂大輔は不安定な投球ながら勝ち数・勝率・防御率のいずれも昨年より大きく改善し、レスターが先発の柱として復活したことで、これもきっちり帳尻をあわせてきている。
ただ、レギュラーシーズンでア・リーグ東地区の逃したことが祟って、プレーオフの初戦は優勝候補のエンゼルス。行方が心配されたが、何のことはない、新人ロウリーのサヨナラ打で対戦成績を3勝1敗としてリーグ優勝決定戦への勝ち抜きを決めた。この調子でいけば、ボストンの街がまたGO SOXという文字で溢れるのも時間の問題だろう。

ところで、日本の「野球専門家」諸氏は、このプレーオフをどう見ていたのか。
「”通”に聞く大予想」として紹介されたスポーツナビの記事を抜粋する。

伊東勤
本命:エンゼルス
対抗:カブス
大穴:レイズ
コメント: 「本命」はエンゼルスかな。ア・リーグではエンゼルスとレッドソックスが「2強」ですけど、レッドソックスはエンゼルスにものすごく分が悪いんですよね(シーズン1勝7敗)

与田剛
本命:エンゼルス
対抗:カブス
大穴:レイズ
コメント:「本命」はエンゼルスでしょうか。「対抗」はカブス。「大穴」はレイズになるのかな。まず、エンゼルスはバランスが良く、先発から中継ぎから抑えがいて、攻撃陣も安定しているし。西地区はほかのチームが弱い分、勝率の高い勝ち方をしたのに、プレーオフでは負けてしまうというのが、ここ数年「ジンクス」としてはありますよね。ただ、それは「戦力」として見たときに「本当にそうなのか」というと、僕はやっぱり「あの戦力はすごいな」と思うんですよね。

…本命も対抗も、あっさりと地区シリーズで消えてしまった。
まあ予想そのものは水物なので仕方ないとはいえ、こんな日本のスポーツ新聞でも読めば書いてあるような情報をもとに、適当な発言をしないでもらいたいものである。



前回29日の記事で、麻生太郎内閣発足について「米国ではほとんどニュースになっていない」と書いたが、まったくニュースになっていないわけではない。
が、書かれていることといったら、結構キツかったりする。
中でも、New York Timesの社説は、パンチが強かったようだ。
(原文はこちら
「麻生太郎再登場」として、05年から07年の外相時代の「問題行動」を振り返り、彼を「好戦的な民族主義者」と形容したうえで、「いくら景気浮揚に注力するといっても、中国・韓国を含めて経済関係の深いアジアの国々と現実的な視点でうまくやれないとダメよ」と結んでいる。
これについては日本の外務省関係者から、「麻生首相は中国・韓国を尊敬してますよ」という反論が同紙に投稿されているが、肝心の中国・韓国からの援護射撃でもなければ、あまり説得力がないだろう。

彼の「問題発言」について、日本では中国や韓国に関するものが大きく取り上げられているように思うが、欧米人についても差別的ととれる発言をしていたようで、こちらの報道ではそれも振り返られている。
日本語で何と言ったのかわからないが、要するにはパレスチナ問題について、欧米人は青い目と金色の頭髪をもっているから絶対に解決することはできず、日本人は黄色人種だから信用されている、という内容だったらしい。
(原文はこちら
こういう人物を、いくら血統的にサラブレッドだからといって、一国の宰相にすることの文脈を、日本の政界はどの程度理解しているのだろうか…。



大方の予想通り、麻生内閣が成立した。5日前のことである。米国ではほとんどニュースになっていない。
と、思ったら、早速国土交通大臣が辞めた。
と、思ったら、後任にはまた二世議員が登用された。
辞めた中山成彬は非二世であったから、また二世が増えたことになる。気づいたら、総理大臣を筆頭に、実に2/3が世襲代議士である。
  • 麻生太郎(首相) …義父は鈴木善幸元首相。吉田茂の孫。さらにその祖父は大久保利通
  • 塩谷立(官房長官) …父は元衆議院議員の塩谷一夫
  • 中曽根弘文(外相) …父は中曽根康弘元首相
  • 鳩山邦夫(総務相) …祖父は鳩山一郎元首相
  • 金子一義(国交相) …父は金子一平元蔵相
  • 石破茂(農相) …父は元参議院議員・元鳥取県知事の石破二朗
  • 森英介(法相) …父は元環境庁長官の森美秀。故三木武夫元内閣総理大臣夫人三木睦子は伯母
  • 中川昭一(財務・金融相) …父は元科学技術庁長官の中川一郎。参議院議員中川義雄は叔父
  • 浜田靖一(防衛相) …ハマコーの息子
  • 野田聖子(消費者行政担当相) …祖父は野田卯一元建設相。
  • 小渕優子(少子化問題担当相) …父は小渕恵三元首相、祖父も衆議院議員
  • 甘利明(行政改革担当相) …父は甘利正元衆議院議員
というわけで、全閣僚18名中12名である。
もちろん米国も、現大統領がそうであるように二世代議士は多数存在するが、これだけ社会・経済状況が芳しくない中で、これだけウジャウジャ出てきたりはしない。
一体、誰の国なのか。
もっとも、選ぶ有権者にも責任はあるのかもしれないが…




 ボストン日本人研究者交流会の主催で、東京大学の柳沢幸雄教授をお招きして、「リーダーの条件と育成 〜ボストンでの経験から考える〜」と題した講演が行われた。環境分野の専門家としてハーバード大学と東京大学という日米の最高教育機関で教授を務められたご経験から、米国と日本のリーダーシップのあり方の違いについての考察と、そこに立脚した現在の日本の閉塞的状況への視座を提供された興味深い内容であった。以下、教授が指摘された内容を簡単に振り返っておきたい。

  • 米国のリーダーはアイデアの提示が役割であり、意思決定の主体。日本のリーダーはアイデアの調整が役割であり、一致団結・前例主義が行動規範
    • 米国では、大学教授が研究提案を書いて自分で研究資金を獲得し、それをもとにスタッフを雇って研究室を運営するように、リーダーが自分のアイデアをもとに集団を牽引しなければならない。したがって意思決定やその結果に対して責任をもつのは明らかにリーダーであり、スタッフは執行にのみ責任をもつ
    • 20世紀、ハーバードの総長は5人(つまり平均任期20年)であったのに対し、東大の総長は20人(平均任期5年)もいたという。東大の総長はかつては6年、今では4年という任期が決まっていて、法学部など「基幹学部」の持ち回りになっているので、自動的に短い任期となるのだろうが、長期的視点で改革に取り組まなければならないはずの高等教育機関において、リーダーが名誉職的な位置づけになっていることがわかる
    • 日本の一致団結・前例主義の典型例として紹介されたのが、日露戦争から太平洋戦争に至る歴史。日露戦争勝利という「前例」が、日本軍をして、その戦争に勝利した1905年に制式採用された三八式歩兵銃(サンパチ)を太平洋戦争に至るまで使わしめたという。ゼロ戦を作る技術がありながら、40年前の歩兵銃を後生大事に使い続けるというのは、バブルがはじけ人口が減少をはじめた今も戦後~高度経済成長に至る仕組みを踏襲し続ける日本の姿と重なる
    • 日本でも松下幸之助の「やってみなはれ」に代表されるように、前例を重んじない起業家的な雰囲気がかつてはあったが、高度経済成長で「勝ちパターン」ができてしまうと、それもなかなかみられなくなってきた
  • 米国は事後主義、日本は事前主義
    • 日本は、稟議システムが象徴するように、事前に関係者の了解をとって根回しをすることが最重要であり、その際の説得のために前例が重要視される。稟議でハンコを一個とばすと大変なことになるし、リーダー自身も自分の名前で意思決定することを怖がる。会議の議事録についても、発言から名前を消してくれ、というリクエストがしばしば出る。逆に事前にこうしたプロセスさえ経ておけば、結果に対する責任をリーダー個人に追及されることはあまりない
    • 一方で米国では、前例のないことを意思決定し、それに向かって集団をひっぱるのがリーダーであるので、あくまで結果が重要。いいかえれば、米国的・民主的リーダーシップとは、明確に機能する罷免規定のもとでの「独裁」
  • 米国のスタッフは自前、日本のスタッフは既存
    • 前述の大学研究室の例や、ホワイトハウスのスタッフの例からもわかるように、米国ではリーダーが自分の決定した施策を実行するために最適なスタッフを自分で選ぶ。結果に対して自分が責任を負わなければならないわけだから、自分が安心して執行を任せられる連中をつれてくるのである。従って、リーダーが変われば、多くの場合スタッフも変わる
    • 日本のスタッフ組織は、誰がリーダーであろうが踏襲され、往々にしてリーダーよりも経験が長い。官僚組織がその代表例である。従って誰がリーダーになってもとりあえず動くし、宰相が1年で政権を投げ出すことが続いても、とりあえず国はまわる
  • 米国のスタッフの忠誠心はリーダー(個人)への忠誠心、日本は集団への忠誠心
    • 確かに、日本では「愛社精神」という言葉はあるが、社長のために頑張ろう、というのは、オーナー会社を除いてあまりないように思う
  • 米国は公開の市場メカニズムによる自動的評価、日本は「公平な第三者」による評価
    • 従って米国では、リーダーの評価が市場メカニズムによって自動的に決まる。結果の出なかったリーダーは自動的に新陳代謝される。これを機能させるために、情報公開も徹底している。大学の教授や授業に対する学生の評価は、全世界の誰もが見られるようになっている(例えばスローンの例はこちら
    • 翻って、日本でよく聴く「公平な第三者」による評価とは、まったく意味の分からない言葉。結果に責任を負うつもりがあるのかないのか。評価に必要な社会的費用、間接部門が考慮されていない

以上のような考察から、教授は「前例がないからこそ、自らの判断と責任でやってみよう。それがエリートの責務」という言葉で、講演を締めくくられた。

ありがたい精神の刺激をいただいた。






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Shintaro
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経営コンサルタント
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旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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