以前にも触れたTeam Projectも、終盤に入っている。
コミュニケーションの授業での提案内容のプレゼンは1週間後の12月4日(火)、組織プロセスの教授へのレポートの提出はその2日後の6日(木)である。
これまでに、「クライアント」であるソフトウェアベンチャー会社のマーケティング資料を読み、14件の従業員インタビューをこなし、それらを通じて得られた情報から、会社の組織課題の現状分析と解決策の提案をほぼ終えていた。後は、これをどうまとめあげるか、という段階である。
解決策の提案については、何をどこまで言うかがチーム内で合意に至っていなかったが、それ以外のプレゼン内容は大筋で合意できていた(と少なくとも私は思っていた)ので、今日までに解決策の提案のパートを除いて一通りプレゼンを完成させ、コミュニケーションの授業のTA(=Teaching Assistant)に見てもらって、残り一週間で完成度を高めていこう、という段取りになっていた。
既述のとおり、スローンに来る前の仕事でコンサルティングをやっていた経験を買われ、本プロジェクトではリーダーを任されていたので、プレゼンを纏め上げる過程では文字通りリーダーシップをとって、メンバーからのインプットを統合、修正して、一つのカタチに仕上げつつあった。
しかしながら、今日のそのTAとのミーティングでは、様々な問題が噴出した。
1.見せ方 ...簡潔さと深さのトレードオフ
まずはプレゼンの見せ方である。
コミュニケーションの授業では、いくつかのポイントから「良いプレゼン」を定義している。
そこで主張されていることは、
- なるべく結論から入ること
- とにかく資料の文字数は減らすこと
- 色使いを減らすこと
などである。それらは、原則論としては理解できる。問題は、この特に2点目と3点目について、プレゼンの内容を犠牲にしてでもこれらを突き詰めることが、コミュニケーションの授業の得点に繋がる、というゲームのルールであり、これに対する学生の姿勢である。
中でも、文字数を減らした方が良い(=一つ一つの文字を大きくした方が良い)、というのは原則論としてそうだが、どの程度が適切な度合いか、という点についての見解はさまざまである。そして、コミュニケーションの授業で示される「お手本」は、自分が所属するコンサルティング会社で教育された(そして実際のプロジェクトの経験から適切と証明された)適正水準よりも遙かに文字数が少ない。これでは、私の理解では、資料は非常に簡潔になる反面、必要不可欠な情報の深さが確保されない。
一例を挙げると、プレゼンの最初に全体要旨を一枚にまとめて示そうとした際、それは要旨であるから文ないし節にならざるをえず、文字数が増える。しかしコミュニケーションの授業での教えを貫徹しようとすると、これは単語に圧縮されてしまう。例えば
"Lack of resource for implementation"
というところを、
"Resource"
とだけ書け、ということになる。
これでは、Resource(ここでは人的資源)が足りないのか多いのか、足りないとしたらどこで足りないのかがまったく伝わらない。人的資源に何らかの問題があるということが伝わればよい、という見方もあるが、それは世の中のほぼすべての会社に言えることで、面白くも何ともない。
2.分析の視点・焦点
組織プロセスの授業では、MITのパテントになっている"The Three Lenses"という組織考察の切り口を使って、プロジェクトを進めることを求めている。逆に言えば、この切り口で扱える事象しか、プロジェクトの分析対象と出来ない。理屈上、この切り口は組織課題を網羅的に捉えているはずなので、その会社において組織課題が重要だということに異論がなければ、この切り口で分析を進め、その中でも特にどこが対策を要するか、ということを語ることは、筋が通っている。
ところが、コミュニケーションのクラスでは、
「組織プロセスで教えられている視点に拘らず、クライアントにとって意味があると思われる内容を述べなさい」
という。
これは、組織プロセスで教えている分析の視点の自己否定に近い。
しかしながら、やはりここでも、論理的に何が正しいかは別にして、とにかくコミュニケーションのクラスでの得点を狙いにいきたいチームメートからは、言い回しだけでいいから、組織プロセスで教えている表現を使わないようにしよう、という提案が出てくる。
3.進め方
これは最初から、問題が出るかな、と思っていた点ではあるが、チームの共同作業の進め方で、大きなフラストレーションを(お互いに)感じる。
効率的に進めるため、一連のインタビューの最初の3回に自分が出向き、そこから得られた情報から全体の提案の仮説をA4一枚くらいでまとめてしまい、チームがこれを強化・修正していく方法をとった。
終盤まで、これは機能していた。一度チームで合意したことにしたがって、皆が議論を積み上げていくので、話が瞑想せず、分析が深まった。
ところが終盤、特にプレゼンをどう見せるか、あるいはどこまで直接的な言い回しにするか、という多分に主観的な議論になってくると、複数のチームメートが朝令暮改でいうことを変え、しかもそのたびに強行に主張(英語で…)するので、決まるものも決まらなくなってきた。何となく、彼らは自分が何を正しいと思うかではなく、どうすると得点が高くなりそうか、というのを周囲の情報から推し量ろうとするので、その周囲の情報が増えると、言うことが変わるようであった。
以上のようなことから、今日のミーティングはかなりのフラストレーションが募るものとなった。
とはいえ、議論は前に進めねばならず、また個人的事情としてこのプレゼンの翌日が次女の出産予定日のためプレゼンに出席できない可能性もあり、自論に拘っていても仕方ないので、得点稼ぎモードに同意してプレゼンの内容を変えたが、夜中に行ったこの作業ほど、今までプレゼンを作っていて虚しさを覚えたことはなかった。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。
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