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在る偏屈者による半年遅れのMBA留学日記、そして帰国後に思うこと
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日本への空路は続く。
1時間ほど前に日付変更線を越えた。いつもここまでくると、あと少しという気がする。
浅い眠りの中で、リーダーとしての決断力について、考えていた。なぜそれについて考えていたのかは分からない。恐らく、眠りにつく前に食事をしながら見ていた映画(米国のイラク、アフガニスタン派兵およびそこでの戦略の是非を題材にした映画)の影響もあるだろう。飛行機に乗るとなかなか眠れない性質であり、一方で一人でモノを考える時間は有り余るくらいあるため、しばしばこうした抽象的な、大して役にも立たないことを考える。
そして何となく見えてきたのは、以下のような構成要素である。

  • 正しい初期判断を導き出す分析力(目的を達せられる可能性の高い行動を特定する力)
  • 分析が示唆する行動を断行する能力(複数の選択肢を合理的に評価、選択する力)
  • シナリオ想定能力(客観的に「望まれざる結末」「中途で起こりうる混乱」を予知し、準備できる能力)
  • 「不測の事態」における軌道修正能力
  • 失敗の許容力・反省力

ここで論じている決断力とは、一過性の、瞬間的な白黒の判断ではなく、ある目的を達成する上での一連のプロセスを通じた判断力である(ぱっと決めて、後は野となれ山となれ、というのは、実行責任を伴うリーダーの力を測る基準にはならないと思っている)。
これらの各要素について、「正しさ」と「スピード」という変数が加わる。どちらに重きが置かれるかは、まさに状況によるだろう。緊急対応など、時間の経過による判断の価値そのもののディスカウントが大きすぎる場合もあるし、落ち着いて拙速を避けることが判断の価値を高める場合もある。
今回の日本旅行にあてはめるならば、目的(この定義そのものが難しいのだが)を最大多数の日本への理解の向上と満足、無事の帰国、というあたりに置いたときに、それが達せられる可能性の高い行事を特定し、それらから一連の旅程を選択し、いくつかのリスクを想定し、対処を考える、というところ(上記の3つ目)までは、米国出発前に議論してきたところである。後は、4つ目と5つ目の要素と、そしてその中で生じるこれら5つのステップの小規模なサイクルが、全体としての決断力の優劣を決めるだろう。平たく言えば、多くの時間を費やしていろいろ検討してきたものの、現場に入ってからは多かれ少なかれ変更が迫られるので、そんなものだと思ってフレキシブルにやろう、ということである。
現実に、経由地のサンフランシスコでは、米系航空会社お得意のオーバーブッキングで、参加者のうち3名(オーガナイザー1名を含む)が関空までの予定便に搭乗できなかった。彼らは期せずして、サンフランシスコで一夜を過ごさなければならないし、明日の大相撲大阪場所は見逃さざるを得ないだろう。こういうときに、最初の予定と比べての損失を嘆くよりも、その場で与えられた情況を以下に楽しめるようにもっていけるかが、我々に求められた機転なのだろうと思う。自分は生来、決めたことに拘る方なので、これは意識的に戒めたいところである。

飛行機の後方、スローン生が多いエリアでは、何人かが立ち上がって仲間の座席に近寄っては、何やら盛り上がっている。周りの乗客に迷惑になる可能性を除けば、いい雰囲気である。誰も、この企画のリーダーシップ云々について気にしているものがいるようには思えない。上記のような議論も、まあ頭の体操程度の意味しかないとかもしれない。それならそれで、別にいい。皆で楽しくやりましょう。

関空まで、あと3時間を切った。

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スローン学生による日本旅行が始まった。
朝3時半、まだ家族が寝ている時間に自宅を発ち、空港で他の学生と合流して、サンフランシスコ経由で大阪・関西空港に向かう。妻と娘二人を残して行くことの心苦しさと、日本に「行って、帰る」ということの概念的な不自然さは解消されないままとなったが、見送ってくれた妻を見るに、家族のところから出発して家族のもとに帰る、と捉えれば、後者の不自然さは大した問題ではないと片付けることができた。

既述したように、今回の旅行は参加学生180名、配偶者45名という、スローン始まって以来の規模となった。うち、124名は米国人(正確には米国市民権を持つもの)であり、圧倒的多数である。彼らに次いで多いのは、スペイン人(8名)、メキシコ人(7名)などのラテン系の連中で、ラテンアメリカにスペインとイタリアを加えると合計33名だが、それでも米国人の1/4にしか過ぎない。
自分の中での今回の最大のテーマは、彼らがなぜ日本に行こうと思うのか、そして日本で彼らが何を感じるのかを探ることであるが、この参加者構成を考えると、「彼ら」を少なくとも米国人、ラテン系、その他、くらいには分けて捉えた方が良さそうである。
日本への道すがら、山本七平氏の「日本人とアメリカ人」を読み返した。文字通り、日本人と米国人の思考様式、行動様式の違いについて、分析的な示唆を与えてくれる書である。その中で語られているいくつかのキーワードの中で、以下のような対比は今回の旅行により分かりやすい視座を供しているように感じた。

  • 米国人は「空間的思考」、日本人は「歴史的思考」
    つまり、米国人にとっては、米国という空間にあるものは何でも米国のものである。自由の女神も、チャイナタウンも、イスラムのモスクも、寿司屋も、米国の領内にあるものすべてが「米国」を形成している。高々200年強の歴史しかない人口国家においては、それ以外に国を規定する術もないのかもしれない。一方で、日本人にとってはそうはいかない。例え東京の真ん中であっても、「これが日本だ」と言われると違和感を覚えるものは無数にある。つまり、過去からの日本の文化的・民俗的特徴に照らし合わせて、それと一貫しているものを日本のものと捉える。従い、米国の例とは逆に、海外にある「日本的」なもの、例えばパリの日本庭園は、日本のものと捉えられる。こうした視点を踏まえると、今回の旅行における米国人参加者は、日本で見るものを、何が日本的で何がそうでないかという区別なく、すべて「日本」として捉えるのではないか、と予想される。まあそれはそれで強ち間違いではないのだろうが、10日後の彼らの日本像がどうなっているのか、予想がつかない。
  • 米国人は「フェアではない」と怒る、日本人は「生意気だ」と怒る
    例えば授業で、あまりにも頻繁に、かつ長々と発言をする生徒がいたとする。これに他の学生が批判する際、日本人的には「生意気なヤツだ」という表現が多いように思われるが、米国人的には「他の学生の発言・学習の機会を阻害しており、フェアではない」という批判になる。これを今回の旅行に当てはめると、例えば飛行機の出発予定時刻の2時間前を集合時間として設定した際に、それより遅れて現れて、ちゃっかり飛行機に乗れた人間がいたりすると、「自分ももう少し家でゆっくりしてから来たかったのに、これではフェアではない」という文句がでることが予想される。今回の旅行では日本入りしてからも参加者に様々なオプションを与えているし、事前予約してもらっているツアーやディナーも、多かれ少なかれキャンセルや追加参加の希望がでるだろう。そうしたリクエストにも、フェアに対応している限り、大きな不満はでないということか。

こんなことを考えながら、スローン学生の列島大移動を観察してみたい。



スローン学生による日本研修旅行「Japan Trek」の出発が、いよいよ明後日の20日に迫った。
今日は最後の参加者への説明会が行われ、行程上の留意点などが説明され、個別の質疑応答セッションがもたれた。
直前まで、このオプショナルツアーをキャンセルしたいだの、やっぱりこっちの会社に行きたいだの、酒飲まないから飲み放題はやめろだの、自分がいけなくなったから妹を行かせろだの、様々な無理難題を参加者から投げつけられたが、結局参加学生167名、同伴者(配偶者など)45名、オーガナイザー(世話役。我々のこと)13名の計225名という大人数で日本に飛び立つことになった。だんだんその日が近づき、リアルに想像するようになると、数字が恐ろしく感じられる。清水寺の周辺や新宿駅周辺で群集に入り混じって収集がつかなくなってもまったく不思議ではない。自分のメンタルヘルスのためにも、あまり細かく管理しようとしないことが大事なようにも思えてきた。
と、そんな不安は別にして、純粋にこれだけの人間を祖国に連れて行けるというのは、名誉なことである。韓国も、定員20数名でツアーを企画したらしいが、定員割れしたらしい。それに比べれば、日本に興味を示してくれた方にはまず感謝である。
また、日本に帰るのは、渡米以来初めてである。これだけ長期間(10日間)家族と離れたこともない。家族には迷惑をかけるが、日本からスカイプで家族と話す、というのはどんな感じか、ちょっと楽しみでもある。
何が起こるかまったく想定できないが、参加者と一緒に、楽しんで来たい(すくなくとも、キレないように)。



コア・チームメイトで、同じ寮に住むチリ人のAR君から、彼のチームに参加しないか、という誘いを受けた。
彼は同じくコア・チームメイトの米国人SS君と組んで、MITのBusiness Plan Competition、通称"100K"に「出場」していたのだが、そのプランが一次選考を通過したとのことで、より詳細なプランの求められる二次選考に向けて、力を貸してほしい、ということだった。100kの一次予選は、210組強の参加チームから35組が通過できる、という狭き門で、それを突破したチームメイト2名に尊敬の念を抱くとともに、誰もが参加したいと思うそのチャンスに自分の力を見込んで誘ってくれたことを、驚き、そして名誉なことだと思った。
誘いは、二つ返事で引受けた。
引受けてから、彼らが提案している事業プランの中身を聞いた。
携帯電話端末を利用した自動車相乗りサービス、というとイメージしていただけるだろうか。予め登録した会員にのみ提供されるサービスで、会員が自動車を運転しており、座席に余裕があって他の会員を乗せてもいいと思っている場合、彼・彼女の位置がGPSを通じて他の会員に共有され、それをみた会員は同乗したければ謝礼金をウェブサイトを通じて「ビッド」、ドライバーがその金額でokであれば取引成立で、落札額の数%がフィーとして会社に支払われる、というような仕組みである。
一般消費者を対象にした所謂B to Cモデルであるため、特有の難しさもあるが、やりようによってはいろいろ面白い展開ができそうにも思えた。
メンターとしてアサインされたベンチャー・キャピタリストや、弁護士などとの打ち合わせを経て、4月いっぱいプランを練り直し、5月1日に提出、というスケジュールであるらしい。
この手のコンテストには、興味は大いにあるのだが、事業創造欲とアイデアに乏しいため、常に自分から行動を起こせないでいた。それがこういうかたちで降ってきたのだ、力になれれば面白いことができそうである。



米国五大証券の一角に数えられるベア・スターンズ(The Bear Stearns Companies)がJRモルガンに買収されることになった。
14日のニューヨーク連銀による救済策発表に続き、16日に発表された。
衝撃的なのは、13日時点でおよそ一株60ドルだった株価が、NY連銀による救済策発表後33ドルまで下落、そしてJRモルガンによる買収は、一株2ドル(総額2億3600万ドル)で合意されたことである。たった3日で、歴史ある米国大手投資銀行の株価が30分の一になり、たった200億円ちょっとで買収されてしまったのだ。

ベア・スターンズの名前は、米国に来るまで(もっと言えば去年サブプライム問題が深刻化するまで)正直言って聞いたこともなかったが、1970年代に初めてMBO(LBO)を手がけた会社で、約1万4千人の社員を抱える、紛れもない大手投資銀行である。昨年6月に同社傘下のヘッジファンドHigh-Grade Structured Credit Strategies Enhanced Leverage Fundが破綻し、これに与信供与していたメリルリンチ、Bank of Americaなどの大手金融機関が軒並み損害を被ったことが、「サブプライム問題」の端緒であったが、当然ながらメリルリンチなどの貸し出し銀行以上に、これを直接管理していたベア・スターンズへのパンチは強烈で、昨年下期だけで損失は3000億円弱にのぼった。もともとセカンダリ市場を中心にした「得意分野」にしか基盤を持たない体制もあって、体力的に持ちこたえられなかったのだろう。
14日に発表されたNY連銀の救済策は、1998年のLTCM救済より一歩踏み込んで(当時は救済を仲介したのみ)、直接資金を貸し出すというもの。まさに、かつての山一證券への日銀特融と同じスキームである。そのことからして、いかに状況が深刻かを更に市場にアピールすることになってしまったのだが、それから中一日をおいての身売り発表、しかも市場価格からあまりにも乖離した金額でのディールに、先に開いたアジアの株式市場はパニック売りになっている。つまり、「あの銀行の正味価値ってそんなもの?ということは、あの銀行の負債(投資している企業にとっては資産)はほとんど価値がないということ?」という理解から、一気に売りが広がったのだ。

明日、米国の市場が開いたら、どうなることか・・・。
今夜一緒に飲んでいた、同じ寮に住むチリ人のAR君は、フランスの投資銀行カリヨン(Calyon)からサマーインターンの内定をもらって喜んでいたのだが、このニュースに接して、一転不安そうな様子であった。
そういえば、山一が破綻したときも、自分は学生だったなあ・・・。



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PROFILE
HN:
Shintaro
性別:
男性
職業:
経営コンサルタント
趣味:
旅行、ジャズ鑑賞
自己紹介:
世の中を素直に見ることが苦手な関西人。
MITスローン校でのMBA、プライベート・エクイティでのインターン、アパレル会社SloanGearの経営、そして米国での生活から、何を感じ、何を学ぶのかー。

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